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No.9 広岛大学 大学院生物圏科学研究科 助教 星野 由美 先生

卵子を知り,卵子を活かす

取材日:2016年1月21日
広岛大学
大学院生物圏科学研究科 助教
星野 由美 先生

専门分野:生殖生物学,家畜繁殖学

経歴:
2006年 03月 東北大学大学院博士後期課程修了 農学博士
2006年 04月 日本学術振興会特別研究員(PD)
2007年 12月 東北大学大学院農学研究科 助教
2011年 10月 スタンフォード大学医学部 客員助教(兼任)
2015年 11月 広岛大学大学院生物圏科学研究科 助教

 今回は,生命现象のスタートである卵子の神秘に魅了され,精力的に研究をされている星野由美先生にお话を伺いました。

研究内容について

 学生时代から卵子に関する研究を行っています。卵子は精子とともに生命现象が始まる源であり,亲から子へと遗伝情报を伝达するための特别な细胞です。体细胞とは异なり,减数分裂という未知のメカニズムを経て受精し,次世代の个体を形成するチャンスを获得します。

 卵子ではこの减数分裂が正しく行われて初めて受精ができるようになるのですが,复雑なメカニズムで制御されていますので,未だに分かっていないことも数多くあります。このメカニズムを解明し,その知见を体外操作技术の改良や新しい技术の开発に繋げていきたいと考えています。

 现在は,「卵子を知り,卵子を活かす」のキャッチフレーズで,①受精?発生能力の高い(いわゆる「质の高い」)卵子の生物学的特徴を明らかにすること,②质の高い卵子や受精胚を体外で生产?选别?活用するための技术を开発すること,③卵巣の未冻结保存法を确立すること,の3课题に取り组んでいます。

卵子 写真

 卵子のもとになる细胞は生まれた时から卵巣内に存在しています。ヒトの场合,出生直后の卵巣には,约200万个の卵子のもとになる细胞(原始卵胞)があるのですが,年齢を重ねるごとに急速に减少し,闭経期にはほとんど残っていないと言われています。卵子の状态は加齢に伴って変化し,歳をとった卵子は受精やその后の発生を难しくしています。有限である卵子を効率的に活用するために,発生する能力のある,いわゆる「质の高い卵子」の特徴を分子レベルで明らかにして,それを効率的に选别する技术を确立しようとしています。

 研究で得られた知见は,具体的な技术として社会に还元していくことが求められます。卵子の研究は,家畜の増产や希少动物种の繁殖,ヒトの生殖补助医疗などを视野に取り组んでいます。例えば,ウシやブタなどの家畜は私たちの食生活に欠かせない存在です。良质な畜产物(肉?乳)を安定的に生产し,家畜としての経済的価値を高めていくためには,さまざまな工夫が必要になっています。家畜を効率的に生产するためには,理论上は,良质の肉质を持つ亲同士を掛け合わせれば,その能力を受継いだ子どもが生まれてきますが,そうするとどうしても生产コストがかかってしまい,畜产物の値段にも响いてしまいます。そのため,高品质な畜产物をより安価で安定的に提供するための対応が求められています。

 この课题に対して,さまざまな取り组みがなされています。繁殖技术の観点からは,受精卵(胚)移植による产子の获得がそのひとつに挙げられます。この方法を使うと,卵巣内にある卵子を利用して受精卵を効率的に作製でき,移植する动物にとってベストなタイミングで移植できるメリットがあるのですが,作製した受精卵の中から発生できそうな良质な受精卵を选别して移植しなければ,受胎は期待できません。通常は,顕微镜下で受精卵の形や大きさ,细胞质の色などを観察して,基準を満たしているものは移植に供试されています。しかし,移植しても発生しないものも一定の割合で存在していますので,効率的な生产を目指す场合には,确実に発生するものを选别することが不可欠です。そこで私は,発生可能な受精卵の特徴を分子レベルで明らかにして,选别に有効な评価基準を确立しようとしています。これが実现できれば,移植による受胎率を高めることができますので,家畜の効率的増产に贡献できると确信しています。

研究風景 写真

 また,卵子や卵巣の保存にも取り组んでいます。动物の遗伝资源の保存やヒトの生殖补助医疗(不妊治疗)に适用されている技术のひとつに,卵子の冻结保存があります。これは,文字通り卵子を冻结させて保存する技术です。一般的な方法として多用されていますが,卵子1个ずつでしか保存ができない上,冻结により卵子がダメージを受けるなどリスクも指摘されています。それらを解决(回避)するために,个々の卵子ではなく,卵巣(卵子を作り贮蔵している臓器)で保存することを考えています。

 卵巣はサイズの异なる细胞で构成され,水分を含んでいますので,卵巣を冻结させようとすると,表层と中心部分で冻结速度にばらつきが出てしまい,卵子や卵巣内の细胞がダメージを受け死灭しやすくなります。そのため,卵巣丸ごとの冻结保存は难しいと考えられています。そこで,これを避けるために,冻らせない新しい保存法の开発に挑戦しています。これまでの研究で,植物由来の抽出物を利用して,卵巣を冻らせずに一定期间保存させることに成功しています。卵巣を安全に保存できれば,より多くの卵子や卵子のもとになる细胞の保存も可能になりますので,卵子にとっても安全な状态での保存が実现します。また,卵巣の机能も温存させることができますので,将来的には卵巣を体内に戻すことで,体の中で排卵させ,妊娠?出产させることも可能になります。

研究の方法

 哺乳动物の卵子1个のサイズは0.1尘尘程度で,とても小さいです。一つ一つを丁寧に扱う必要がありますので,マウスピースを使って操作しています。マウスピースには,ガラス管を装着して使用しているのですが,このガラス管は卵子1个が通过できる程度の内径になるように,先端を火であぶりながらサイズを调整しています。卵子を培养する时には,このガラス管に卵子を培养液と一绪に吸い上げて移动させています。できるだけ卵子にダメージを与えないように,体温に近い温度(37℃)に加温して操作するなど,细心の注意を払いながら実験を进めています。

実験機材 写真

海外での研究について

 海外での研究は私の视野を大きく広げさせてくれました。これまでにスウェーデン,イタリア,アメリカの3か国の大学で研究を行う机会があったのですが,国や组织によって研究の进め方は多様で,学ぶことがたくさんありました。ここでは,ひとつアメリカのスタンフォード大学での学びをお话ししたいと思います。

 特に印象的だったのは,结果(研究成果)を出すスピードが速かったことです。なぜそれが実现できるかというと,研究に専念できる教职员が多いことと,グループの全员が一つの目标に向かって,本気で取り组んでいるからです。また,研究费も重要な要素です。滞在中,ある日突然研究室が空っぽになっていた,という状况に遭遇したことがありました。后から闻いた话では,研究费がなくなってしまい急遽研究室を闭锁することになった,とのことでした。研究费がなければ研究を続けることはできませんので,研究室の责任者のプレッシャーは相当大きいものと思います。それだけに,一人一人が一生悬命に研究活动に取り组んでいるのです。だからと言って,日夜を问わず研究をしているわけではなく,多くの人は早く仕事を终わらせて家族との时间やプライベートの时间を充実させたいと思っています。研究もプライベートも両立させてこそ一人前,そこは见习うべき点ですね。

これからの展望

 基础的な研究を続けながら,実用化に向けても展开していきたいと思っています。今はマウスの卵子を材料として研究を进めていますが,対象を広げて,家畜や希少动物种の増产にも繋げていきたいです。また,ヒトの生殖补助医疗(不妊治疗)も视野に研究を进めていますので,そうした领域にも贡献できるように取り组んでいきたいと考えています。

 受精して初めて生命现象が始まる,これほど神秘的なことはないのではないでしょうか。分子レベルで卵子内の现象を解明し,明らかにしたことを活かして,家畜の生产や不妊治疗に繋げる。研究成果を社会へ还元することを常に意识しながら,これからも研究を进めていきたいと思います。

研究風景 写真

 

取材担当:勝池 有紗(広岛大学 大学院教育学研究科 生涯活動教育学専攻 博士課程前期1年) 


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