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No.23 広島大学学術院 助教(原爆放射線医科学研究所)廣田 誠子 先生

放射线を「正しく」知るために
―高度な科学技术を用いて社会に贡献する―

廣田 先生 写真
取材日:2018年9月5日
広島大学学術院 助教
(原爆放射线医科学研究所)
廣田 誠子 先生

専门分野:线量评価

経歴:
2008年 03月 京都大学理学部卒業
2011年 03月 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 修士課程卒業
2012年 04月 京都大学大学院理学研究科物理学第一教室教務補佐員
2016年 11月 京都大学大学院理学研究科物理?宇宙物理学専攻博士課程 研究認定退学
2016年 12月 京都大学大学院医学研究科臨床統計学講座 教務補佐員
2017年 10月 広島大学原爆放射線医科学研究所 助教

放射线の线量评価に取り组む

 现在とり组んでいる研究は大きく分けて3つあります。具体的には、①瀬戸内海地域の海上における放射线线量测定システムの开発、②髪や爪、歯などの生体试料の被ばく量测定の手法开発、③小线源を用いた放射线治疗における照射线量测定のシミュレーションです。

 まず、瀬戸内海における放射線用測定システムの開発についてお話しします。これはドローンや海洋ブイに線量計やセンサーを搭載し、IoT(Internet of Things:物がインターネット経由で通信すること)や衛星通信などを使ったネットワークによってどこからでもリアルタイムでその地域の線量を知ることができるというものです。東日本大震災の後、陸上にはたくさんの放射線モニタリングシステムができました。その結果、地上では線量を計測することができるようになりました。一方で、海上においては原発周辺の海水をくみ上げて計測するということはなされていますが、広域では通信距離の問題やアンテナ設置の問題等が存在し、常時のモニタリングというのは難しく活用例もほとんどありません。通信業界の方でそのような技術の開発を進めているそうなので、一緒に取り組むことができたらと考えています。広島県の場合、近隣の愛媛県に伊方発電所が存在していることから原子力発電所事故による被災の可能性も考えられます。その際には四国周辺の人々が瀬戸内海を渡って避難することが予想されます。国の案ではバスによる移動等を想定しているようですが、橋を渡るとなると交通渋滞も起こる可能性がありますので、当然海路による避難も考えられます。その避難の際に海上の線量の状態を把握し、適切な避難経路を示すためにモニタリングシステムの開発が必要となると考えています。

 次に、生体试料に対しての被ばく线量测定の手法开発に関してお话しします。具体的には、生体试料の中のラジカルというものを电子スピン共鸣という方法で计测することで被ばく线量を推测する手法の开発です。髪については未だに成功例がないため、简単な高线量领域から、すでに高线量领域では手法が确立している歯については低线量领域においても测定手法の确立を目指しています。髪と主成分が近い爪を用いた测定は研究报告があがってきてはいるのですが、髪の方は测定可能な时间の短さに加え、髪に含まれているメラニンに紫外线が当たることによってもラジカルが発生するので、常に重复してラジカルが発生している状态となっており、そのことが更に计测を困难にしています。原理的には爪と同じなので、髪でも同じラジカルが计测できるはずです。髪に含まれるメラニンの方のラジカルを正确に计测することで、それを差し引くことで放射线による影响を明らかにすることができると考えています。

 最后にお话しするのは、小线源を用いた放射线治疗において照射线量を测定する方法のシミュレーションについてです。小线源を用いた放射线治疗とは、线量の强い放射性物质を管などで患者の体内に直接挿入し、患部に直接照射するがん治疗の一种です。このような治疗は计算によってどの程度患者に影响があるかどうかを事前に想定しますが、実际の人体は个人个人によって臓器の位置が异なることや、小线源を设置する机械的な精度のために1ミリ程度ずれてしまうこともあります。医疗行為に関する被ばくは多くの场合、命に関わる重要な施术なので、患者の方は多少のリスクを负ってでも治疗に临みます。现状では、大雑把に患部に当たっていて治疗の効果も出ている状态ですが、できる限り不必要な被ばくは减らさなくてはなりません。そうするために、患者に実际に当たっている放射线の量を知る手法の开発に力が注がれています。私が取り组んでいることもそのうちの一つです。
原理的に言えば、今までに挙げた3つの研究テーマは异なる别の分野ですが、私の所属している研究室では放射线の线量を测定することができて、それによってどのくらい被ばくするかを推测できるものであれば、どのようなものでも研究テーマになります。まとめて言うと、私の研究テーマは放射线の线量评価ということになります。これらは最终的には被ばくした人の健康リスクを评価するということにつながっていくと考えています。

ラジカル測定装置 写真
写真:电子スピン共鸣法によってラジカルを测定する装置。2つの円筒形は电磁石となっており、その间に试料を设置して上部にあるマイクロ波発生装置から导波管で试料にマイクロ波を照射し吸収する。磁场によってラジカルの持つ不対电子のエネルギー準位は分裂しており照射されたマイクロ波がそのエネルギー差に相当すれば吸収されることを利用して不対电子の量を测定する。

线量评価を用いて豊かな社会の実现を目指す

 将来的には、原子爆弾や原子炉事故、核実験などによる一般の人々への被ばくにおいて、どのような线量评価を行ってきたかを比较検讨し、この80年间の间にどのような発展があったか、どのような技术革新が线量评価の精度の向上につながるかを调べ、それを踏まえた上で今后の社会に役立つ低线量领域での线量评価手法を开発していきたいと考えています。また、放射线治疗が発达し患者のみならず医疗従事者への被ばく管理が昨今の课题となっている现状があります。そこで医疗従事者の被ばく実态を调査し、効率的で合理的な管理方法や线量评価手法の开発も行っていきたいと考えています。さらに、福岛の放射线事故以降における一般社会の混乱を目の当たりにして、简単な放射线の知识のみならず、実质的な被ばくによる被害が発生するには被ばく「量」が问题となるという定量的なものの见方や、リスクと利益を天秤にかけるという考え方などを広く世间に伝えていく必要性を感じ、知识の普及活动も行っていきたいと考えています。そういったことは放射线のみならず、高度な科学技术を上手に用い豊かな社会を作っていくためには必要なものだと思っています。

 先にお话しした具体的な研究テーマに関连した话に络めると、ドローンやセンサーを用いた海上での线量测定に関连して、滨辞罢を使いてヨウ素などの放射性物质を投与した患者が使用した隔离病室の汚染をドローンで调査できないか构想を练っているところです。この技术を応用することによって、より早い段阶から室内の放射性物质の状态を把握することができれば、现在よりもより早く病室の除染や清扫を行うことができ、病室の稼働回転数を上げることができるのではないかと考えています。

現在取り組んでいる研究のきっかけ ― 東日本大震災とNPO活動

 私は博士课程では、ハイパーカミオカンデというスーパーカミオカンデの时期计画の研究に参加し、ハイパーカミオカンデに取り付けるための光センサーの开発や、スーパーカミオカンデの大気ニュートリノの测定精度を上げるためのソフトウェア开発を行っていました。ニュートリノをはじめ、高エネルギー物理学や素粒子物理学といわれる分野では、电子を测定したり、空から降ってくる宇宙线を测定したりしています。それらを测定する技术という観点でみれば、放射线の测定技术と非常に似通った部分があります。そのような理由で放射线を扱う学问分野に入るというのもよいかなと考えました。

 また、私は京都にある科学教育に重きを置いて活动している狈笔翱に参加していた経験があり、ちょうどその时に东日本大震灾が起こりました。この狈笔翱は退官された物理学者や生物学者の人々が多く在籍しており、放射线に関するデマが多く流れていた状况を忧虑し、放射线についての勉强会を开いたり、専门家を呼んでシンポジウムを开いたりと、きちんと勉强して放射线を理解し正しい情报を発信していこうと活动を行っていました。この経験も现在取り组んでいる放射线防护学への进路を考えるきっかけの一つになりました。狈笔翱で放射线に関する正しい知识を発信するために论文を集めて和訳し、解説しながら知识を伝える本をまとめて発表していたところ、ちょうど広岛大学の原爆放射线医科学研究所の先生の目に留まり、公募の存在を教えてもらって现在に至ります。

取材風景 写真

好奇心と深く追求する力

 私は幼い顷からいろいろなことに兴味があり、好奇心が强いほうであったと思います。研究者にとって、探求心や好奇心といったものは研究に対するきっかけという意味でとても大切だと思いますが、それらは同时に诸刃の剣にもなってしまうと思っています。というのも、私の场合は兴味の幅が広すぎて逆に集中できないというようなことがあり、あっちにもこっちにも気が行ってしまって、研究する时に実は邪魔になっているということもあるからです。きっかけをつかんだ后に、物事について深く追求していく必要があるので、好奇心そのものよりもある特定の物事について腰を落ち着けてきちんと调べるという强い意志や、详细な部分を詰めていくことができる能力が必要になってくると思っています。周囲を见ている限り、そのような细かい部分をきちんと詰められている人のほうが研究者としては强いなとよく感じます。特に実験は机上の空论ではなく、现実世界で行うものなので、気温?湿度?量や、具体的な手顺に伴って起きてしまう事など、现実世界で起こる要因をすべて考虑して実験の环境を作っていく必要があります。一方で、细かい部分ばかりを见続けても成果がいっこうに出ない时もあるので、见切りをつける力も必要になります。好奇心だけでは研究を进められない、根気は必要だがいつまでも同じ部分を见つめすぎてもいけない、これらの力のバランスが大事だと考えています。

学生へのメッセージ ― 自分を持つこと

 日本の教育では比较的「お行仪よく」いることをよしとされることが多いですが、研究においては自分の希望や主张は远虑せずに「议论のテーブルにのせる」ことが重要になると思います。「お行仪よく」というのは、空気を読んで黙っているということでもあるし、上の立场の人の言うことをよく闻くということでもあります。小さいうちは自身に知识のストックがないので、当然大人の言うことを闻くほうが上手く物事が进む可能性が高いです。それを积み重ねて人は学んでいくと思うし、スキルアップの段阶では有用なことだと思います。しかし、途中で意识を改革する必要が出てきます。大人になれば、自分の周囲の人々はいろいろな立场でいろいろな観点からものを言うようになります。ですから、周りの言うことばかり闻いていると自分がそれに振り回されてしまいます。私自身もそのような経験がありましたので、学生に対しては「今私はこう思うけどこの研究を一番长く考えているのはあなただから、あなたが私の言ったことが正しいと思った时はこの助言を使ってほしい」というような言い方をしています。どんな立场の人が言ったことであっても、その言叶は间违っていると自分が思った时にはきちんとそのことについて议论をしていくことが大事だと思います。もちろん、自分の视野が狭いだけの场合もあるので、そのような场合も含めてちゃんと话し合い、违和感を伝えていくことが大切だと考えています。このようにしていると、共同研究者や指导教官とは时にぶつかり合うこともあると思いますが、ぶつかり合っても信頼関係を筑いていくことは可能です。

 研究に限った话ではないですが、私は世の中には楽しいことがたくさんあると思うので、本人が好きなことなら何を选んで人生を过ごしてもよいと思っていて、结局は「自分を持つ」ことが最终的に幸せにつながるのではないかなと思っています。研究业界は自分でこれがやりたい、これが社会の役に立つ、面白い、と思えることができる反面、周りと意见が対立したり周囲が研究の意义をなかなか理解してくれなかったりするときに疎外感や孤独感を感じる部分もあります。また、私の取り组んでいるような実社会に深く根差した学问分野では、状况や环境、観点が変化するとその意味の有无が大きく変わってしまうこともあります。そのような状况の中で、学生の皆さんが自分自身の纳得がいくようにやりたいことやっていって欲しいなと愿っています。

取材を终えて

 自分の研究とはかけ离れた分野の内容で、先生が丁寧に説明して下さったにもかかわらず、理解するのが大変でした。何度も辛抱强くお话しして下さった广田先生には感谢しております。また、广田先生のお话の中で、研究活动においては好奇心と追求力のバランスが重要というものがあり、これは分野関係なく研究者を目指す上で考虑する必要があることではないかと深く考えさせられました。

取材担当:谷 綺音 (広島大学 総合科学研究科 博士課程後期2年)


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