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No.7 広島大学 特別研究員 奥 正太 さん

“走化性”の理解から始まる微生物との共生

奥正太さん 写真
取材日:2016年1月14日
広島大学 特別研究員
奥 正太 さん

専门分野:微生物生态学

経歴:
平成24年      広島大学大学院先端物質科学研究科分子生命機能科学専攻博士課程後期修了
平成24年10月~  広島大学大学院先端物質科学研究科 代謝変換制御学研究室 研究員
平成27年4月~    広島大学特別研究員(グローバルキャリアデザインセンター)

研究内容 — 微生物の走化性メカニズムの解明

 私は微生物学の中でも特に环境细菌の行动や生态を中心に研究をしています。细菌の约半数の种はベン毛を持ち、水中では1秒间に约0.05ミリもの速さで非常に活発に动き回ることができます。私たち人间からするとそれほどの距离ではないですが、细菌1个体の大きさは0.005ミリ程度なので、つまり细菌は1秒间に体の大きさの10倍の距离を进む能力を持っているというわけです。身长150センチの人が1秒间に15メートル(=时速54キロ)を移动すると考えてみてください。どれだけ早いスピードで动き回っているか想像がつくかと思います。また、ただ単に早く动き回るだけでなく、その行动は细菌の好き嫌いによって変化します。细菌が好む物质には寄って行き(集积反応)、嫌いな物质は避ける(忌避反応)—细菌のこのような行动特性を「走化性」と呼んでいます。

細菌の「走化性」動画

 走化性により细菌が集积する物质と忌避する物质は细菌种によって异なります。これまでの研究から、多様な走化性を决定している要因は、走化性センサータンパク质であると考えられています。しかし、これまでの走化性センサー研究の主役は大肠菌という细菌で、环境中に生息する细菌の走化性センサー机能?役割の多くは不明でした。

その背景として、大肠菌は5种类のセンサーしか保持していないのに対し、环境细菌の多くは20?60种类ものセンサーを保持しており、环境细菌の走化性の研究は简単にはできないという事情がありました。大肠菌のセンサータンパク质の机能解析には、遗伝子破壊による「机能丧失型」の手法が使われていましたが、数十种类ものセンサーを保持している环境细菌に対して、センサー遗伝子の破壊を逐一行っているとコストも时间もかかりすぎてしまいます。また、たとえセンサー遗伝子を破壊できたとしても、复数のセンサーが互いに作用し合う影响やその可能性を完全に除外することが难しいなど「机能丧失型」の解析法の限界がありました。

私は細菌と植物の相互関係に興味があったため、植物に有益なシュードモナス?フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)という細菌を用い研究を開始しました。しかし、この細菌は37種類もの走化性センサータンパク質を持っており、従来の解析法ではこの細菌の走化性メカニズムを解明することは困難でした。そこで、現在私が所属する研究室で長年研究がされてきた26種類の走化性センサータンパク質を持つ緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)というヒトの病原菌に、シュードモナス?フルオレッセンスの遺伝子を導入する「機能獲得型」の解析法(異種株相補解析法)を考案し、シュードモナス?フルオレッセンスの走化性センサー機能を明らかにすることに成功しました。また、走化性センサーの機能が特定できたことで、シュードモナス?フルオレッセンスがどのような走化性によって植物を探索?定着しているのか明らかとなってきました。これを応用すれば、植物に有益な細菌を植物へと集積させ、より効果的に有益作用を利用できるようになると期待されます。さらに同様のアプローチを使い、植物に悪影響を与える細菌の走化性メカニズムを解明するための研究にも取り組んできました。

研究風景 写真

基础から応用へ

 生物の行動特性を上手く活用することが出来れば、人間の生活がより便利になると考えています。身近な例をあげると、虫よけスプレーなどは害虫の行動特性(特に、忌避反応)が上手く利用されたものです。人間にとって不利益な影響を及ぼす微生物に関しても同様に、その微生物の行動をコントロールすることが出来れば、私たちはより住みやすい生活を手に入れることができると思います。例えば、200種類以上の植物に悪影響を及ぼしている青枯病菌(Ralstonia solanacearum)は、世界の植物病原菌の中でも上位にランクされるほど深刻な植物病原菌です。この菌を駆除する対策として、これまでは臭化メチルを使用した土壌の殺菌が行われてきました。しかし、臭化メチルはオゾン層破壊物質であることから2005年以降使用が禁止されたため、現在は代替となる対策の開発が研究されています。その中でも、細菌の走化性を利用した研究は珍しいと言えます。他の細菌同様、青枯病菌にも集積する物質や忌避する物質が存在し、その特性を解明することで青枯病菌の行動を抑制し、農作物被害の軽減につなげたいと思っています。ただ、細菌の走化性は簡単に目にすることが出来ないので、なかなか信じてもらえないというのが現実です。ですので、まずはこのアプローチについて納得していただけるような研究成果を出すことが重要だと感じています。

インターンシップで得た知识を活かし、
现场で使える技术の开発に取り组む

 植物に害を及ぼす细菌の行动を制御しつつ、植物に有益な细菌を植物の周りに集积できるような方法を开発することが现在の私の目标です。これまでの研究はほとんど実験室の中で行ってきましたが、実际に现场で使える技术を开発するためには、研究の场をフィールドにも広げる必要があります。そのためには、実験室で研究を行う段阶で、より农地の环境に近い条件下で実験をしていくことが必要不可欠であると考えています。これまで実験に使ってきた土(砂)ですが、これは硅砂(けいさ)と呼ばれる人為的に精製された砂で、农地の土とは性质が非常に异なるものでした。ただ私自身、土に関してはそれほど知识がなかったため、农业?食品产业技术総合研究机构 近畿中国四国农业研究センターにおける2ヶ月间のインターンシップを通して、畑の土に関する知识や土を使った実験の方法、ルールなどを习得しました。

取材風景 写真

マンボウをより多くの人に知ってもらうために

 インターンシップを経験して、フィールドは色々な意味でスケールが大きいということを改めて実感しました。フィールドでは1サンプル200驳もの土を使う上に、実験を繰り返し行い、フィールドに特有のランダム性(フィールド环境下の様々な要因など)を含めた评価をしていきます。一方、研究室では砂20驳に水が数十ミリリットルという小规模の実験をしていたので、ごくわずかな量の砂を使用した実験ではフィールドには応用が効かないということを学びました。

 土は粒子の大きさや有机物の含有量によってその性质を大きく変化させ、砂浜の砂のような状态にも、粘土のような状态にもなります。畑の土の粒子は比较的普通の大きさで多くの有机物を含みます。また同じ畑の土であっても、その特质は地域によって异なります。インターンシップは京都で行ったので、その际は京都に特有の土を使用していました。土地によって土の性质が违うことを考えると、将来的には细菌の走化性を利用した技术も地域ごとに様々な方法を提案していく必要があるのかもしれません。

 最后に、农业の现场で技术の普及を目指す场合、农家の方にわかりやすく伝えることが重要だということもインターンシップを通して学びました。一般に、研究成果を报告する际、より具体的な数字を并べて説明しますが、これでは农家の方には受け入れられにくいというのが现実だということを教えていただきました。开発した技术を普及する段阶になればインターンシップで得たこれらの知识も活かしていきたいと思います。

 

取材担当:笛吹理絵(広島大学 大学院総合科学研究科 博士課程後期1年)


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