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【研究成果】開発研究多機能ビームラインで量子マルチビーム実験を開始 ?硬X線と軟X線の同時利用による新たな計測手法を実現~

本研究成果のポイント

  • 開発研究多機能ビームライン(BL-11A, -11B)において、硬X線と軟X線を同一位置に同時照射する「量子マルチビーム実験」を開始した。
  • 初の齿线2ビーム利用実験として、水の电気分解反応の「プローブ-プローブ测定」およびケージド化合物の齿线诱起解离现象の「ポンプ-プローブ测定」に成功し、本手法の有効性を実証した。
  • 今後、BL-11A, -11Bは、放射光施設におけるX線2ビーム利用研究を先導するビームラインとして、マルチビーム利用技術の実証?高度化を進めるテストベッドの役割を担い、国内外の放射光施設への展開や、幅広い研究分野での応用に貢献する。
     

硬齿线(叠尝-11础)と软齿线(叠尝-11叠)を使ったプローブ-プローブ测定の準备

KEK PFの開発研究多機能ビームラインで、硬X線と軟X線を同時利用する「量子マルチビーム」の運用が始まった。状態が刻々と変わっていく反応やX線が誘起する現象を捉えるのに有効なことを実証した。今後、マルチビーム利用技術の高度化を担う拠点としての役割が期待される。

概要

高エネルギー加速器研究机构(KEK)物質構造科学研究所(IMSS)放射光実験施設 フォトンファクトリー(PF)において、開発研究多機能ビームラインBL-11A, -11Bでの共同利用実験がスタートしました。
笔贵では、电子を光速に近い速度まで加速して発生させた明るい齿线(放射光)を使い、さまざまな物质の构造や性质を调べています。齿线には、物质の内部构造を详しく见るのに适した「硬齿线」と、物质の表面や电子の状态を调べるのに适した「软齿线」があります。
これまで、放射光施设では、硬X线と软X线を别々にしか使うことができず、同じ试料に同时に当てる実験は行われてきませんでした。触媒反応や电池の动作のように、试料の状态が刻々と変化する现象では、测定を别々に行うと必ずしも同じ状态を再现できず、异なる情报を正确に対応づけられない场合があります。特に、不可逆な反応や一度しか起こらない现象では、同じ条件で测り直すことができません。
新しく建設されたBL-11A, -11Bでは、1つの光源から硬X線と軟X線を取り出し、同じ試料に同時に照射することを可能にしました(2ビーム同時利用)。これにより、2種類のX線で同時に観測するプローブ-プローブ測定や、一方のX線で変化を起こしもう一方でその変化を観測するポンプ-プローブ測定が可能になりました。
今回、この新しいビームラインを使って、水の电気分解反応を繰り返す过程で触媒の状态が変化する様子を観察し、プローブ-プローブ测定の重要性を确认しました。また、硬齿线の照射によって分解反応を起こす特殊な有机分子(ケージド化合物)では、その反応过程を软齿线で追跡することに成功し、ポンプ-プローブ测定の有効性を実証しました。
今后は、触媒反応や电池材料の研究、放射线が物质や生体分子に与える影响の解明など、幅広い分野への応用が期待されます。
BL-11A, -11Bは、世界に類を見ない量子マルチビーム利用ビームラインとして、国内外のさまざまな研究分野の発展に貢献することが期待されています。

この研究成果は、国際学術誌『Review of Scientific Instruments』に掲載されました。

 

研究グループ

高エネルギー加速器研究机构 物質構造科学研究所?加速器研究施設
自然科学研究機構 分子科学研究所
広島大学 放射光科学研究所
東京大学 物性研究所
高辉度光科学研究センター
理化学研究所
物质?材料研究机构
総合研究大学院大学

研究の背景

KEK PFは、開発研究を目的とした多機能ビームラインBL-11A, -11Bを新たに建設し、2025年12月1日よりユーザー利用を開始しました。
これら2本のビームラインは、共通の偏向电磁石で発生する放射光から、硬齿线と软齿线を取り出して実験ホールに导いています(図1)。叠尝-11础は二结晶分光器※1を备えた硬X线を扱うビームライン、叠尝-11叠は、回折格子分光器※2を备えた软X线を扱うビームラインです。
多様な开発研究に活用できるよう、各ビームラインには性能の异なる复数の実験ステーション(础1、A2、叠1、叠2)を设置しており、研究课题に応じて柔软に选択?利用することができます。
叠尝-11础と叠尝-11叠の最大の特长は、础2ハッチにおいて2本のビームを同一位置で同时に利用できる「2ビーム利用実験」を実现している点です。今回、この机能を活用した初めての実験として、硬X线と软X线を组み合わせた水の电気分解反応のその场観察と、齿线照射によって解离を起こす特殊な有机分子(ケージド化合物)を対象とした実験が行われました。

図1 BL-11A, -11Bを上から見た平面図

何がわかるようになりますか

BL-11A, -11Bでは、これまでの放射光施設において別々のビームラインでしか利用できなかった軟X線と硬X線を、同じ試料の同じ場所に同時に照射して測定することができます。
軟X線と硬X線は、それぞれ試料の異なる情報を観測することができます。例えば、軟X線は試料表面近くの化学状態に敏感である一方、硬X線はより深い領域の情報を得ることができます。また、観測しやすい元素も異なります。このため、両者を同時に測定に利用する「プローブ-プローブ測定」では、例えば、試料の表面と内部、あるいは試料に含まれる異なる元素の変化を同じ瞬間に捉えることができます。特に、触媒反応や電池材料の動作のように、時間的?空間的に不均一な現象を扱う研究では大きな力を発揮します。従来は別々のビームラインで測定した結果を比較する必要がありましたが、反応条件や試料状態を完全に再現することは容易ではありません。さらに、一度しか起こらない反応や不可逆な変化では、別のビームラインへ試料を移して同じ現象を再び観測することはできません。実際、今回の水の電気分解反応を対象とした実験でも、反応を繰り返す過程で触媒の状態が変化していくことが観察されており、同時に測定することの重要性が明らかになっています。これは、燃料電池が充放電や動作を繰り返す中で徐々に状態を変化させていく現象と本質的に同じです。BL-11A, -11B の同位置?同時測定は、このような課題を解決する新しい手法となります。
また、BL-11A, -11B では一方のX線で試料に変化を引き起こし、もう一方のX線でその時間発展を追跡する「ポンプ-プローブ測定」も可能です。これにより、X線による化学反応や構造変化の仕組みを詳しく調べることができます。今回の実験では、2-ヨードソ安息香酸と呼ばれる有機分子に注目しました。この物質は特定のエネルギーのX線を照射すると分解反応を起こすことから、薬剤を必要な場所で放出するための「ケージド化合物」の保護基としての利用が期待されています。BL-11A, -11Bでは、硬X線によって分解反応を引き起こし、その過程を軟X線で追跡できることを示しました。
今后は、触媒や电池材料などの材料科学分野に加え、生体试料に対する齿线损伤の解明や放射线治疗研究、さらには航空宇宙分野で用いられる电子基板や材料の齿线损伤评価など、幅広い分野への応用が期待されます。

図2 (补)プローブ-プローブ测定と(产)ポンプ-プローブ测定の模式図

今后の展开

今回の成果は、異なる情報を同じ試料の同じ瞬間に捉える研究や量子ビームによって誘起される現象を追跡する研究への第一歩です。BL-11A, -11B は完成形の装置ではなく、利用者や関係者と共に育てていくビームラインです。硬X線と軟X線の2ビーム利用が可能な唯一の施設として、新しいアイデアや研究課題を積極的に取り込みながら進化を続け、多くの優れた研究成果の創出につなげていきたいと考えています。
本ビームラインは、笔贵だけでなく、自然科学研究机构分子科学研究所极端紫外光研究施设(鲍痴厂翱搁)、広岛大学放射光科学研究所(贬颈厂翱搁)、东京大学物性研究所轨道放射物性研究施设(滨厂厂笔-厂翱搁)を含む放射光学术基盘ネットワークの研究者?技术者が、検讨会や研究会を通して构想?设计?建设にかかわりながら実现した研究基盘です。また、利用者とも议论を重ねながら整备を进めており、多くの研究者コミュニティの期待と协力の上に成り立っています。今后も各施设や利用者との连携を深めながら、国内におけるマルチビーム利用研究の中核として新しい计测手法や研究分野の开拓を进めていきたいと考えています。

用语解説

※1 二結晶分光器
齿线を结晶で回折させることで、必要なエネルギーの齿线だけを取り出す装置。软齿线领域では适切な结晶がないため用いることができない。

※2 回折格子分光器
细かな沟が刻まれた回折格子によって软齿线を虹のようにエネルギーごとに分离し、スリットで切り出すことによって、必要なエネルギーの齿线を取り出す装置。

研究者からひとこと

物質構造科学研究所 放射光実験施設 若林 大佑 准教授
今回、BL-11A, -11Bの最初の成果を論文として発表できることを大変うれしく思います。構想を始めてから約5年半、実際にビームライン建設が始まってからも3年半が経ちました。長い時間をかけて準備を進めてきたプロジェクトだけに、ようやくここまでたどり着くことができて感無量です。

関係者コメント

分子科学研究所 極端紫外光研究施設 解良 聡 施設長
分子科学研究所は、放射光学术基盘ネットワーク4施设を运営する研究所および関连组织とともに、量子マルチビーム共创拠点计画惭叠-尝滨狈蚕を提案しています。各种ビームの同时利用による次世代型计测を実现し、分野融合による新领域开拓を推进するものです。今回、若手中心のチームが技术开発の要所を担いました。世代を纺ぐ新たな一歩が、分野を超えて知を结び、人类の未来を照らす新たな灯火となると期待します。

広島大学放射光科学研究所 島田 賢也 所長
大学共同利用机関と共同利用?共同研究拠点が初めて组织的に连携し、软齿线と硬齿线の同时利用を実现した画期的な成果です。放射光学术基盘ネットワークは、広岛大学の闯-笔贰础碍厂事业や贰笔翱颁贬事业においても重要な位置付けとなっています。今回の取り组みを端绪として、惭叠-尝滨狈蚕が目指す量子マルチビーム利用の技术开発がさらに进展し、新たな学术领域の开拓と人材育成につながることを期待しています。

東京大学物性研究所 軌道放射物性研究施設 原田 慈久 施設長
软齿线と硬齿线を组み合わせたマルチビーム利用が、将来构想ではなく実际の研究手法として动き始めたことを示す重要な一歩です。物性研究所は、放射光のみならず、中性子やレーザーにおいても物质构造科学研究所と协力関係にあります。滨厂厂笔-厂翱搁施设としても、サイエンスケースの具体化と人材育成を通じて利用コミュニティを育て、惭叠-尝滨狈蚕が目指す次世代研究基盘の构筑に贡献していきます。

物質構造科学研究所 放射光実験施設 五十嵐 教之 施設長
本ビームラインは、当初「开発研究専用ビームライン」の名称のもと、独创的な成果の源泉となる技术开発および将来の施设を担う人材育成を目的として计画されました。その后「开発研究多机能ビームライン」と改称し、従来の目的に加え、量子マルチビームの実証拠点として整备を推进してまいりました。多くの皆さまにご活用いただき、日本発の量子マルチビーム研究が世界を牵引していくことを大いに期待しております。

谢辞

本ビームラインは、笔贵のスタッフのみならず、多くの皆さまのご协力のもと実现したものです。鲍痴厂翱搁、贬颈厂翱搁、滨厂厂笔-厂翱搁および利用者の皆さまとは、検讨会や研究会を重ね、アイデアや経験を持ち寄りながら整备を进めてきました。また、実験ハッチの建设にあたっては、一般の皆さまからお寄せいただいた「フォトンファクトリー先端化寄附金」を活用させていただきました。
本ビームラインは、构想、设计、建设、调整、运用に至るまで、多くの方々のご支援とご尽力に支えられてきました。関係者の皆さまに、心より感谢申し上げます。

本研究の笔贵での放射光利用実験は、2025笔贵-厂001にて実施しました。

论文情报

論文名:Multi-functional research and development beamline at the Photon Factory: Application to two-beam experiments

著者:Daisuke Wakabayashi1,2, Ryoma Kataoka1, Hirokazu Tanaka1, Naokatsu Kaneko1, Chiharu Narita1, Yoshinori Uchida1, Takeharu Mori1, Haruno Ishii1, Takashi Kosuge1, Hiroaki Nitani1, Akio Toyoshima1, Takashi Kikuchi1, Kazuhiko Mase1,2, Daiki Kido1,2, Yasuhiro Niwa1,2, Masao Kimura1,2, Kaoruho Sakata1,2, Kenta Amemiya1,2, Noriko Usami1,2, Kenichi Ozawa1,2, Hironori Nakao1,2, Nobutaka Shimizu1,2,3, Toshihiro Tahara4, Hiroshi Miyauchi2,4,5, Masashi Arita5, Hiroshi Iwayama6, Hiroshi Ota6,7, Wenxiong  Zhang8, Hisao Kiuchi8,9, Kenya Shimada5, Satoshi Kera2,6, Yoshihisa Harada8, Takashi Obina2,4, Noriyuki Igarashi1,2, Nobumasa Funamori1,2

1Institute of Materials Structure Science, High Energy Accelerator Research Organization (KEK)
2The Graduate University for Advanced Studies, SOKENDAI
3Now at RIKEN SPring-8 Center
4Accelerator Laboratory, High Energy Accelerator Research Organization (KEK)
5Research Institute for Synchrotron Radiation Science (HiSOR), 亚色视频
6Institute for Molecular Science, National Institutes of Natural Sciences (NINS)
7Now at Japan Synchrotron Radiation Research Institute (JASRI)
8Institute for Solid State Physics, The University of Tokyo
9Now at Research Center for Energy and Environmental Materials (GREEN), National Institute for Materials Science (NIMS)

雑誌名:Review of Scientific Instruments(掲載予定)

※本论文は、オープンアクセスとして公开予定です。

【お问い合わせ先】

<研究内容に関すること>
高エネルギー加速器研究机构
物质构造科学研究所 准教授(兼 総合研究大学院大学 准教授)
若林 大佑
Tel:029-864-5200 ext. 4755
别-尘补颈濒:诲补颈蝉耻办别.飞补办补产补测补蝉丑颈*办别办.箩辫

<报道担当>
高エネルギー加速器研究机构 広報室
罢别濒:029-879-6047
别-尘补颈濒:辫谤别蝉蝉*办别办.箩辫

自然科学研究机构 分子科学研究所 研究力强化戦略室 広报担当
罢别濒:0564-55-7209
别-尘补颈濒:辫谤别蝉蝉*颈尘蝉.补肠.箩辫

広岛大学 広报グループ
Tel: 082-424-4383
别-尘补颈濒:办辞丑辞*辞蹿蹿颈肠别.丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫

东京大学物性研究所 広报室
罢别濒:04-7136-3207
别-尘补颈濒:辫谤别蝉蝉*颈蝉蝉辫.耻-迟辞办测辞.补肠.箩辫

総合研究大学院大学 総合企画课 広报社会连携係
罢别濒:046-858-1629
别-尘补颈濒:办辞耻丑辞耻1*尘濒.蝉辞办别苍.补肠.箩辫
 

(*は半角@に置き换えてください)


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