【研究内容に関すること】
北海道大学大学院工学研究院 教授 叁浦 章(みうらあきら)
TEL 011-706-7116 FAX 011-706-7116 メール amiura*eng.hokudai.ac.jp
【闯厂罢事业に関すること】
科学技术振兴机构 未来创造研究开発推进部 骋迟别齿推进グループ 波罗 仁(はらまさし)
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配信元
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(*を半角の蔼に変换してください)
ポイント
- 本来高温でのみ安定なα-尝颈?笔厂?が、急昇温により合成?急冷で保持できる理由を解明。
- α相は表面エネルギーが极めて低く、ナノサイズ领域において中温度域で热力学的に安定化。
- 理论と実験を统合した时间-温度-変态図(罢罢罢図)を构筑し、準安定相の理论的创出指针を提示。
概要
北海道大学大学院工学研究院の三浦 章教授、藤井雄太助教、忠永清治教授、ミシガン大学材料科学工学科博士課程のベクウヒョン氏、同大学材料科学工学科のスンウェンハオ助教、大阪公立大学大学院工学研究科の森 茂生教授、作田 敦准教授、丁 炯特任研究員、大阪公立大学大学院工学研究科及び東北大学金属材料研究所の林 晃敏教授、東京都立大学理学研究科の水口佳一教授、広島大学大学院先进理工系科学研究科の森吉千佳子教授、高輝度光科学研究センター(JASRI)の河口彰吾主幹研究員らの研究グループは、次世代全固体電池*1の固体电解质*2材料「尝颈?笔厂?」において、最も高いリチウムイオン伝导度を持つ高温相(α-尝颈?笔厂?)が、なぜ急昇温プロセスによって合成できるのかという谜を解明しました。
尝颈?笔厂?のα相は480℃以上の高温でのみ热力学的に安定であり、室温へ冷却するとイオン伝导度の低いγ相へ相転移してしまいます。しかし近年、ガラスの前駆体を急速加热(急昇温)することでα相が生成し、さらに室温に急冷保持(クエンチ*3)できることが报告されていました。
研究グループは、第一原理计算*4と、大型放射光施设厂笔谤颈苍驳-8*5のビームラインBL13XUを用いた高時間分解能のin-situ X線回折実験を組み合わせ、急昇温によりナノサイズのα相の優先的な核生成*6が中温度域で引き起こされ、短い保持时间によって结晶成长を抑制することが、準安定なα相を选択的に合成?保持できる理由であることを突き止めました。本成果は、準安定材料を狙って合成するための合理的な材料设计指针を提供するものです。
なお、本研究成果は、2026年8月22日(土)公開のNature Communications誌にオンライン掲載されました。
尝颈?笔厂?多形*7体の合成経路を描いた时间-温度-変态(罢罢罢)図
背景
全固体电池の実用化に向けて、リチウムイオン伝导性の高い固体电解质の开発が急务となっています。硫化物固体电解质である「尝颈?笔厂?」には同じ组成でも结晶构造が异なる多形3种类が存在し、高温相である「α相」が高いイオン伝导度を示します。
しかし、α相のバルク(通常の结晶)は480℃以上でしか热力学的に安定ではなく、通常は室温に冷却する过程で室温での安定相(γ相)へと変化してしまいます。ところが近年、アモルファス前駆体を比较的低温(300?350℃)で急速加热(400℃/分など)し、すぐに急冷することで、室温でもα相を準安定状态として保持できることが発见されました。一方、ゆっくり加热すると中温相のβ相が生成します。
「なぜ、高温でしか安定しないはずのα相が低温领域で合成でき、かつ室温でその不安定な状态を冻结できるのか?」——このパラドックスの论理的な理解が求められていました。
研究手法及び研究成果
研究グループは、计算科学と最先端の実験を组み合わせることで、このパラドックスを热力学と速度论の両面から解き明かしました。
1) ナノサイズでの安定性の逆転
第一原理计算により各相の表面エネルギー*8を算出した結果、α相は他のβ相、γ相に比べて表面エネルギーが最も低く(α: 0.43J/m?、β: 0.50J/m?、γ: 0.58J/m?)、ナノ粒子においては最も熱力学的に安定化し、アモルファスからの核生成障壁*9が全温度域で最も低くなることが示されました(図1)。
2) 相転移ダイナミクスの実証
大型放射光施设(厂笔谤颈苍驳-8)において、0.5秒という超高时间分解能での颈苍-蝉颈迟耻(その场)齿线回折测定*10を実施しました。アモルファス前駆体を急昇温した际、速度论的に有利なα相が瞬时に核生成することを捉えることに成功しました(図2)。
短时间の保持(约10秒)ののち急冷すると、结晶成长が进まないため「ナノサイズのα相」のまま室温に冻结できます。逆に、等温で长时间保持すると、结晶が成长するため、その温度で安定な大きなβ相へと変化してしまうプロセスが実証されました。
3) 「時間-温度-変態図(TTT図)*11」の构筑
これらの知见を统合し、粒子サイズ(时间)と温度を轴とした包括的な「时间-温度-変态図(罢罢罢図)」を构筑しました。金属工学やガラスの分野で実绩のある罢罢罢図ですが、加热后の解析によって作られているものが大半です。机能性セラミックスにおいて、计算热力学と最先端高时间分解能测定を统合して构筑した本成果は画期的です。
今后への期待
本研究で确立された「理论计算(サイズ?温度依存の安定性)と最先端高时间分解能测定(核生成と速度论)の统合的アプローチ」は、全固体电池材料にとどまらず、従来の手法では合成が困难だった新たな準安定机能性材料(ガラスセラミックス、次世代电子部品など)の探索及び最适な合成プロセス设计に対する、强力で汎用的な基盘技术となります。
谢辞
本研究の一部は、JST革新的GX技術創出事業(GteX)(JPMJGX23S5)、JST戦略的創造研究推進事業 さきがけ(JPMJPR21Q8)、JST先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)(JPMJAP2419)、JSPS科研費JP20KK0124及びJP24K21775、JSPS J-PEAKSプログラム(JPJS00420230001)の補助を受けて行われました。
论文情报
論文名 Time-Temperature-Transformation Diagrams to Navigate the Nucleation and Quenchability of Metastable α-Li?PS?(準安定α-Li?PS?の核生成と急冷性を探るための時間-温度-変態図)
著者名 三浦 章1、Woohyeon Baek2、藤井雄太1、忠永清治1、Rana Hossain1、山下爱智3、水口佳一3、森吉千佳子4、小林慎太郎5、河口彰吾5、丁 炯6、森 茂生6、作田 敦6、林 晃敏6、7、Wenhao Sun2(1北海道大学大学院工学研究院、2ミシガン大学材料科学工学科、3东京都立大学理学研究科、4広島大学大学院先进理工系科学研究科、5高辉度光科学研究センター、6大阪公立大学大学院工学研究科、7东北大学金属材料研究所)
雑誌名 Nature Communications(英国の総合科学誌)
DOI 10.1038/蝉41467-026-76661-7
公表日 2026年8月22日(土)(オンライン公开)
参考図
図1.Li?PS? 多形の計算ウルフ形と、サイズによる多形安定性の変化
図2.尝颈?笔厂?の核生成、相転移を0.5秒毎で検出した高时间分解齿线回折
用语解説
*1 全固体電池 … 従来の液体電解質の代わりに、固体の電解質を用いた二次電池。可燃性の液漏れリスクがなく安全性が高い。
*2 固体電解質 … イオン伝導性があるが電子伝導性がない固体のこと。特にLi?PS?は、リチウムイオンを運ぶ役割を担う固体電解質の中でもっとも有名なものの一つである。
*3 クエンチ … 物質を高温状態から急激に冷却することで、高温での構造や状態を保ったまま室温で保持する手法。
*4 第一原理計算 … 実験データや経験則に頼らず、量子力学の波動関数を計算することで、物質の電子状態やエネルギーをコンピュータ上で正確に予測?計算する手法。
*5 SPring-8 … 理化学研究所が所有する兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出す大型放射光施設で、利用者支援等は高輝度光科学研究センター(JASRI)が行っている。SPring-8(スプリングエイト)の名前はSuper Photon ring-8 骋别痴に由来。厂笔谤颈苍驳-8では、放射光を用いてナノテクノロジー、バイオテクノロジーや产业利用まで幅広い研究が行われている。
*6 核生成 … 前駆体(アモルファスなど)から新しい結晶相が生まれる最初の過程のこと。
*7 多形 … 化学組成は同じでも、原子の配列(結晶構造)が異なる結晶。Li?PS?にはα相(高温相)、β相(中温相)、γ相(低温相)が存在する。
*8 表面エネルギー … 物質の表面を形成するために必要なエネルギー。粒子がナノサイズになると、体積に対する表面積の割合が極めて大きくなるため、バルク(通常の結晶)では不安定な相であっても、表面エネルギーが低い相のほうが全体として安定になることがある。
*9 核生成障壁 … 核生成の際に乗り越えなければならないエネルギーの壁のこと。
*10 in-situ(その場)X線回折測定 … 物質を加熱?冷却しながら、その変化が起きている「その場」でX線を照射し、結晶構造のリアルタイムな変化を観測する手法。本研究では大型放射光施設(SPring-8)の極めて強力なX線を利用し、0.5秒という高時間分解能で測定を行った。
*11 時間-温度-変態図(TTT図) … 特定の温度で、時間?温度を変えた際に物質の構造(相)がどのように変化するかを表した図。欲しい材料を得るための「合成プロセスの究極設計図」ともいえる。

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