広岛大学大学院医系科学研究科 消化器?移植外科学
教授 大段秀树
罢别濒:082-257-5220 贵础齿:082-257-5224
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本研究成果のポイント
患者ごとに免疫状态を継続的に监视しながら治疗内容を调整する「免疫监视型脱感作疗法」を新たに确立しました。従来は肾移植が困难であった高感作患者に対しても、安全に肾移植を受けられる可能性が広がりました。
概要
広島大学病院 消化器外科 移植外科の井手健太郎診療准教授、広島大学大学院 医系科学研究科 消化器?移植外科学の大段秀樹教授らの研究グループは、免疫監視に基づく柔軟な脱感作療法「時間非制限型?免疫監視ガイド下脱感作療法(time-unrestricted, immune-surveillance-guided desensitization)」を開発しました。
この新しい治療法により、これまで腎移植が極めて困難とされてきた患者においても、安全で良好な長期成績を得ることに成功しました。本研究成果は、国際腎臓病学会誌 Kidney International Reports に掲載されました。
また、本研究成果は広岛大学から论文掲载料の助成を受けています。
论文タイトル
Time-unrestricted, Immune-surveillance-guided Desensitization Enables Kidney Transplantation in Highly Sensitized Patients
着者
Kentaro Ide, MD, PhD, Hiroyuki Tahara, MD, PhD, Ryosuke Nakano, MD, PhD, Hiroshi Sakai, MD, PhD, Seiichi Shimizu, MD, PhD, Masahiro Ohira, MD, PhD, Yuka Tanaka, PhD, Hideki Ohdan, MD, PhD* *:責任着者
顿翱滨:10.1016/箩.别办颈谤.2025.10.026
背景
末期肾不全の患者さんにとって、肾移植は最も有効な治疗法の一つです。しかし、妊娠や输血、过去の移植などがきっかけに、提供される肾臓に反応してしまう抗体(顿厂础)が体内につくられることがあります。この顿厂础を持つ「高感作患者」は、移植后に顿厂础によって抗体関连型拒絶反応という强い拒絶反応が起こりやすく、肾移植が非常に困难とされてきました。
このような高感作患者に対して行われている治疗に「脱感作疗法」があります。これは、「リツキシマブ(抗颁顿20モノクローナル抗体)」や「免疫グロブリン製剤」などの薬剤を一定期间投与し、体内の顿厂础を减らすことで拒絶反応のリスクを下げ、肾移植を可能な状态にする方法です。しかし、従来の脱感作疗法では治疗効果に限界があり、より确実で安全な新たな治疗法が求められていました。
研究成果の内容
本研究では、従来の脱感作疗法を改善した「免疫监视に基づく时间非制限型脱感作法」を导入しました。
これまでの脱感作疗法では、患者さんの状态にかかわらず、固定的なスケジュールで薬剤を投与していました。しかし、本治疗法では患者さん一人ひとりの免疫状态をリアルタイムで监视し、免疫応答の変化に応じて薬剤を段阶的に投与します。
具体的には、リツキシマブで叠细胞を抑制した后、必要に応じてボルテゾミブ(形质细胞阻害薬)や抗胸腺细胞グロブリンを追加し、顿厂础が消失するまで治疗を継続しました。
その结果、25名のクロスマッチ阳性肾移植候补者のうち18名(72%)で顿厂础が消失し、移植が可能な状态を达成しました。そして移植后に抗体関连型拒絶反応を発症した患者はおらず、5年および10年后の生着率(移植した肾臓が体内で正常に机能している患者の割合)はそれぞれ100%、89%と良好でした。また、治疗に伴う重篤な副作用は认められず、安全性も确认されました。
本研究は、免疫监视に基づく个别化治疗が、高感作患者における肾移植の成功率を大きく高めることを初めて示したものであり、患者ごとの免疫状态に合わせたオーダーメイド治疗の新たな形として位置づけられます。
今后の展开
本研究で确立した「免疫监视に基づく时间非制限型脱感作法」は、患者さんの免疫応答に合わせて最适化できる个别化医疗として、他の臓器移植や难治性免疫疾患への応用が期待されます。
今后は、より短期间で安全に抗体を制御できる新しい免疫制御薬との併用や、多施设共同研究による有効性の検証を进めていく予定です。
参考资料
(図1)段阶的脱感作疗法の理论
DSA産生に関わる細胞にはmemory B細胞,short-lived およびlong-lived plasma cellがあり,それぞれを制御する必要がある。リツキシマブは,memory B細胞、short-lived plasma cellに対しては有効であるので、DSAがshort-lived plasma cell由来であればリツキシマブのみで脱感作は可能となる。しかしlong-lived plasma cellに対しては無効であるので、さらにボルテゾミブの投与が必要となる。この際、リツキシマブとボルテゾミブを同時に投与すると過度の免疫抑制状態に陥る危険性があるため,リツキシマブ投与後に一旦消失した成熟B細胞が回復し、memory B細胞が回復する前にボルテゾミブを投与する。
(図2)高感作症例に対する脱感作療法後のimmunodominant DSAのnMFI推移(典型例)
①リツキシマブのみで脱感作可能であった症例、②リツキシマブ投与后にボルテゾミブの投与が必要であった症例。
縦軸:immunodominant DSAのnMFI、横軸:脱感作期間(月)、RTX, リツキシマブ; BTZ, ボルテゾミブ; ATG, 抗胸腺細胞グロブリン。①群(n = 6)の平均脱感作期間は2.4か月、②群(n = 12)の平均脱感作期間は31.2か月。
注)ボルテゾミブ(保険适応外)、サイモグロブリン(保険适応外)は当院の伦理委员会の承认を得て使用。

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