大学院统合生命科学研究科 生体機能化学研究室 教授 石原 康宏
罢别濒:082-424-6529
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本研究成果のポイント
- 空気中の物质を効率的に水に取り込む装置(インピンジャー)を用いて、屋内や车室のような狭小空间の空気质を评価する方法(バイオアッセイ)を开発しました。
- インピンジャーで集めた空気中の物质を免疫细胞(マクロファージ)に処置し、炎症の度合いを调べることで空気质の特性を明らかにしました。
- 使用期间の长い车の车室では炎症を起こしやすい空気质であることが分かり、今后は本バイオアッセイを改良して住居や医疗?福祉施设などの空気环境を高感度に评価し、快适で安全な空间づくりに役立てることを目指します。
概要
広島大学大学院统合生命科学研究科 石原康宏教授らの研究グループは、空気中の化学物質を効率的に水中に回収するインピンジャー(※1)と体の免疫を担うマクロファージ(※2)の培養細胞を用い、屋内狭小空間の空気質を評価する方法(バイオアッセイ)を開発しました。この手法では、まず、インピンジャーを用いて空気中の物質を水中に取り込みます。次に、その水を培養液としてマクロファージに与え、細胞の反応を調べます。さらに、マクロファージの遺伝子発現を定量PCR(※3)で測定して、空気質にどのような物質が含まれていたか推定します。広島大学とマツダ株式会社技術研究所 國府田由紀主幹研究員らの共同研究チームはこの手法を用いて車室内の空気質を測定し、使用期間が長い車ほど車室内空気質が炎症性となることを示しました。
本研究は、2025年9月4日にWiley出版による国際学術誌「Indoor Air」に掲載されました。また、インピンジャーと培養細胞を組み合わせたバイオアッセイについて、特許を出願しています。論文掲載に際して、広島大学から論文掲載料の助成を受けました。
〈论文発表〉
論文タイトル:Evaluation of vehicle interior air quality by impinger collection and subsequent bioassay using cultured macrophages
著者:Yuki Koda, Mie Hirahara, Keiko Matsui, Miwako Oro, Masashi Fujihara, Nami Ishihara, Tatsuto Nakane, Yasuhiro Ishihara.
掲載雑誌:Indoor Air Volume 2025, Article ID 2864983.
DOI: https://doi.org/10.1155/ina/2864983
〈特许出愿〉
出愿番号:特愿2024-193491
石原 康宏、藤原 雅志. インピンジャー及び空気質評価方法
出愿人:広岛大学
背景
空気中には笔惭2.5などの粒子状物质やオゾン、二酸化炭素、二酸化硫黄など、様々な物质が含まれており、これらの种类や量と健康は密接に関连します。日本では、工场や自动车の排出ガス规制が进み、屋外环境における笔惭2.5や化学物质の浓度は全般的に下がってきています。一方、屋外でなく、住宅の部屋や乗り物の内部など屋内环境の空気质もしばしば问题となります。屋内や车内で喫烟すると、笔惭2.5浓度は大きく上昇し、臭気や微生物も空気质に影响します。屋外と比べて屋内は狭所空间であることが多いため、空気中にどのような物质が含まれているか调べることが难しく、従って、屋内空気质の健康影响を推测する手法も限られていました。狭所では、サンプラーを用いてフィルターに空気质を集めたとしても、化学物质量が测定限界以下であることが多く、数値が得られません。そこで、研究チームは免疫细胞の异物検出能が高いことに着目し、「空気质を蒸留水中に集めて培养したマクロファージに処置し、マクロファージの応答から空気质を评価する手法」を発想しました。
研究成果の内容
広岛大学の研究グループは、効率よく空気质を蒸留水中に集めるインピンジャーの开発に取り掛かりました。インピンジャーのノズルをスプレーノズルとして微细な泡が多くできるように工夫し、また、跳ね返りや飞び散りを防止するために反り返るような形として、水の蒸発や散逸を最小限にしました。新たに作製したインピンジャーは、既存のミゼットインピンジャーと比较して、空気质採取时における水の减少量が少なく、また、都市大気粉尘をネブライズした空间より効率的に空気质を回収できることが分かりました。
広岛大学とマツダ株式会社の共同研究チームは、使用期间が异なる车を2种类準备し(2010年製、総走行距离87,000办尘および2020年製、総走行距离6,600办尘)、これらの车室内で空気质を回収し、マクロファージに処置したところ、使用期间が长い车の车室内空気质により、マクロファージにおいて炎症性サイトカイン(※4)である肿疡壊死因子α(罢狈贵α)の発现が増大しました。従って、空気质に炎症诱発性物质が含まれていることが分かります。さらに、2名が乗车して同様の実験を行ったところ、ヒトの乗车により罢狈贵α発现量が増大しました。従って、乗员も空気质に影响していることが分かりました。
今后の展开
本研究で开発した方法(バイオアッセイ)(※5)を用いると、车室内空间や住居の一室など狭小空间の空気质の特性を知ることができます。车室内の空気质を测定し、その空気质を改善するソリューションを开発すれば、快适な车室内空间を创り出すことが可能になります。病院や老人福祉施设など、清澄な空気环境が必要な空间の新しいモニタリング手法にもなり得ます。ヒトは、一日の大半を屋内で过ごすことから、屋内环境の评価は大切です。このバイオアッセイをさらに改良し、屋内空间をより検出感度高く评価できるアッセイ系の构筑を目指します。
用语解説
※1 インピンジャー
ガラス製で円筒形のビンであり、试料気体を导入するノズルが底面近くまで伸びている。内部に液体を入れてポンプを用いて吸引することにより、试料気体が液体中にバブリングされる。
※2 マクロファージ
免疫细胞の1つであり、细菌などを食べて消化することにより异物を除去する。この过程で罢狈贵αなどのサイトカインを产生する。
※3 定量PCR
ポリメラーゼ连锁反応(笔颁搁)を用いて、特定の顿狈础や搁狈础がサンプル中にどれだけ存在するかを定量的に测定する技术です。コロナウイルスの笔颁搁検査にも使われました。
※4 炎症性サイトカイン
免疫细胞から放出され、炎症反応を引き起こすタンパク质です。
※5 バイオアッセイ
细胞など生物由来のサンプルを用いて生物学的な応答を测定する手法を指します。本研究では、异物に対する反応性が高いマクロファージを用い、狭所空间の化学物质影响评価を実施しました。