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【研究成果】皮膚の状態を内部の構造変化まで含めて捉える新たな解析手法を開発 ―コラーゲン線維のわずかな構造変化を、病気の早期診断や化粧品開発に応用期待—

本研究成果のポイント

  • 人の皮肤で、コラーゲン(*1)の量や线维の形が変化する前に、目に见えないごく小さな构造の変化(ダメージ)が起きていることを発见しました。
  • 复数の分析技术を组み合わせ、コラーゲンの量や线维の状态だけでなく、内部の微细な构造まで、同じ试料で详しく调べる新しい解析手法を开発しました。
  • コラーゲンの変化を、単なる线维量の减少だけではなく、「内部の构造の変化」として捉えられる新しい评価方法を示しました。
  • この新しい手法は、皮肤の病変や老化などの変化をより早い段阶で调べる技术として、医薬品や化粧品などの开発への応用が期待されます。

概要

 広島大学大学院先进理工系科学研究科?WPI-SKCM?(*2)の井上克也教授らの研究グループは、人の皮膚に含まれるコラーゲンをさまざまな分析手法で詳しく調べ、見た目にはほとんど変化がない段階でも、コラーゲンの内部ではごく小さな構造の変化が始まっていることを発見しました。
 本研究では、复数の分析技术を组み合わせ、人の皮肤に含まれるコラーゲンの量や线维の并び方、内部の构造を同じ试料で详しく调べました。その结果、コラーゲンの量が减ったり、繊维が切れたりするなどの目に见える変化が现れる前から、コラーゲンの内部ではごく小さな构造の変化が始まっていることを明らかにしました。
 この成果により、これまで主にコラーゲンの量や繊维の形の変化から评価していた皮肤の状态を、内部の构造変化まで含めて详しく评価できる新しい解析方法を示しました。今后は、皮肤の老化や病気の仕组みの解明に加え、伤の治癒や伤あとの形成、线维化など、コラーゲンが関连するさまざまな组织の构造変化の研究への応用が期待されます。
 本研究は、広島大学、愛媛大学、九州大学、Max Planck Institute for Intelligent Systems(ドイツ)、Georgia Institute of Technology(米国)、University of Glasgow(英国)などに所属する研究者との共同研究として実施しました。
 本研究成果は、国際学術雑誌「ACS Nano」に7月16日(木)13時(日本時間)に掲載されました。
 

背景

 动物や人の皮肤などの组织の分子レベルから组织レベルまでの构造は、老化、再生、修復などに非常に重要です。これまで皮肤などの组织构造は再生医疗や発生生物学分野で研究されてきました。一方、生き物はアミノ酸や糖などのキラルな分子を选択的に利用していることが知られているため、キラル构造を定量化できる分光学や构造有机化学からのアプローチも重要です。
 対象とした皮肤の真皮(*3)は、皮肤の深部に位置し、皮肤全体の强度や弾性を支える组织です。真皮の性质は、主成分であるコラーゲンに起因します。まず、コラーゲンはアミノ酸から成るため分子レベルのキラリティ(*4)を持ちます。さらに、コラーゲンは、叁重らせん构造、线维束、线维ネットワークへと阶层的な构造を形成します。
 従来、皮肤やコラーゲン组织の构造変化は、线维の密度、太さ、配向、ネットワークの乱れといった顕微镜で観察できる形态変化を中心に评価されてきました。一方で、こうした形态変化が明确に现れる前に、超分子キラリティ(*5)がどのように変化するのかは十分に明らかではありませんでした。
 そこで本研究では、ヒト真皮コラーゲンを対象に、超分子キラリティと线维ネットワーク构造を同一试料内で相関的に评価することを目指しました。

研究成果の内容

 本研究では、成人女性由来のヒト腹部皮肤试料を用い、同一试料内でコラーゲンの量、线维构造、超分子キラリティを多角的に解析しました。厂贬骋(*6)/共焦点レーザー顕微镜法によりコラーゲン线维の配向やネットワーク构造を评価し、厂搁-痴鲍痴颁顿(*7)および惭耻濒迟颈顿-蚕颁尝-痴颁顿(*8)により、コラーゲンの超分子キラリティを调べました。
 厂搁-痴鲍痴颁顿测定では、コラーゲン叁重らせんに由来する円二色性信号の强度や形状が、试料内の领域によって异なることが确认されました。また、惭耻濒迟颈顿-蚕颁尝-痴颁顿测定では、赤外吸収から见たコラーゲン量が比较的保たれている领域でも、痴颁顿信号が低下または変化している领域が确认されました。これは、コラーゲンが存在していても、超分子キラリティを反映する円二色性信号が低下または変化している可能性を示すものです。さらに、厂贬骋/共焦点レーザー顕微镜法(*9)による解析では、コラーゲン线维の配向やネットワーク构造の不均一性が确认されました。これらの结果を统合することで、コラーゲンの构造変化を、线维密度や形态だけでなく、超分子キラリティ、线维配向、线维间の连结性の変化として捉えることが可能になりました。
 本研究は、限られたヒト皮肤试料を用いた原理実証研究であり、皮肤老化そのものを统计的に结论づけるものではありません。一方で、超分子キラリティを反映する円二色性が、従来の线维密度や形态観察だけでは捉えにくい初期构造変化の指标となる可能性を示しました。

今后の展开

 今后の研究では、より多くのヒト试料や异なる皮肤部位を対象に、超分子キラリティを反映する円二色性が、真皮コラーゲンの构造変化に先立つ一般的な指标となり得るかを検証する必要があります。また、本研究で示した解析枠组みは、皮肤だけでなく、创伤治癒、瘢痕形成、线维化、结合组织のリモデリングなど、コラーゲンが関与するさまざまな生体组织の构造変化の理解にも応用できる可能性があります。
 将来的には、コラーゲンを単なる构造的な足场としてではなく、超分子キラリティから线维ネットワークまでが连结した阶层的な生体材料として捉えることで、コラーゲンベースの生体材料や人工组织の设计にも新たな指针を与えることが期待されます。

図1:本研究で用いた多角的解析の概要
ヒト皮肤试料を用い、惭耻濒迟颈顿-蚕颁尝-痴颁顿、厂贬骋/共焦点レーザー顕微镜法、厂搁-痴鲍痴颁顿を组み合わせることで、コラーゲンの线维构造、密度、超分子キラリティを同一试料内で评価した。

用语解説

(*1) コラーゲン:皮膚や骨、腱などに多く含まれるたんぱく質。皮膚のハリや弾力を保つ役割がある。

(*2) WPI-SKCM?:広島大学 持続可能性に寄与するキラルノット超物质国际研究所(International Institute for Sustainability with Knotted Chiral Meta Matter)。令和4年度文部科学省「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」に採択され設立。結び目やキラリティを持つ物質?構造に着目し、生命?材料?数理などを横断して研究を進める国際研究拠点。

(*3) 真皮(しんぴ):皮膚の表面(表皮)の下にある組織で、コラーゲンを多く含み、皮膚の強さや弾力を支えている。

(*4) キラリティ:キラリティとは、左手と右手のように、鏡に映した形と元の形を重ね合わせることができない性質。例えば、左手を鏡に映すと右手と同じ形になる。

(*5) 超分子キラリティ:単一の分子ではなく、複数の分子が集合してできる構造に現れるキラルな秩序を指す。本研究では、コラーゲン分子が集合して線維やネットワークを形成した際の、キラルな構造秩序に着目した。

(*6) SHG:第二高調波発生。コラーゲン線維のような規則的な構造を、無染色で観察する非線形光学法。

(*7) SR-VUVCD:放射光真空紫外円二色性分光法。真空紫外領域の円二色性を、試料上の位置ごとに測定することで、無染色でコラーゲン三重らせん構造や超分子キラリティを高感度に評価した。

(*8) MultiD-QCL-VCD:量子カスケードレーザーを用いた多次元振動円二色性分光法。赤外領域のうち、主にコラーゲンのアミドⅠ帯(1650cm??周辺)に由来するシグナルを試料上でマッピング測定することで、無染色でコラーゲンの分子構造や超分子キラリティを空間的に評価した。

(*9) 共焦点レーザー顕微鏡法:試料水平方向への回折限界を超える高い解像度と、深さ方向への空間分解能を兼ね備えたイメージング手法。コラーゲン線維の分布、配向、ネットワーク構造の解析に用いた。

论文情报

掲載雑誌名:ACS Nano(アメリカ化学会)
掲载日:2026年7月16日(木)13时(日本时间)
論文タイトル:Correlative Multimodal Framework Reveals Supramolecular Chirality Loss Preceding Fibrillar Rarefaction in Dermal Collagen
著者:Ali Haider, Yusuke Kochi, Andrew K. Schulz, Kuya Aoyama, Aiko Sada, Hisako Sato, Elisabetta Matsumoto, Malcolm Kadodwala, Koichi Matsuo, Katsuya Inoue
顿翱滨:10.1021/补肠蝉苍补苍辞.6肠06602

【お问い合わせ先】

広島大学 大学院先进理工系科学研究科 化学プログラム
持続可能性に寄与するキラルノット超物质国际研究所
教授 井上 克也
罢贰尝:082-424-7416
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■报道に関すること
広島大学 広報室
TEL:082-424-4518  FAX:082-424-6040
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(*は半角@に置き换えてください)


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