本研究成果のポイント
- 瀬戸内海东部におけるイカナゴの渔获量が2017年に急减した背景には、水温上昇、饵不足、捕食者の増加が重なって作用していたことを明らかにしました。
- イカナゴを捕食する可能性のある鱼食性の鱼类14种は、2016年以降に个体数の多い状态が続いていました。
- 春から初夏に十分な饵をとれないと夏眠の开始が遅れ、捕食される危険性が高まることが示唆されました。
概要
広島大学大学院统合生命科学研究科の冨山毅教授、国立研究开発法人水产研究?教育机构水産技術研究所の米田道夫主任研究員らの研究グループは、瀬戸内海東部において春季の主要な漁獲対象種であるイカナゴの漁獲量が2017年に急減し、その後も低水準が続いている要因を調査しました。その結果、水温の上昇と餌不足といった環境変動が重なったことで、2016年にイカナゴが捕食される危険性が急激に高まり、これが2017年の漁獲量の急減につながった主要因であることを明らかにしました。
本研究成果は、2026年1月2日に学術雑誌Marine Environmental Researchに掲載されました。また、本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けました。
〈论文発表〉&苍产蝉辫;
論文タイトル:Local environmental changes boost predation risk in forage fish: application to the sand lance in the eastern Seto Inland Sea
着者:谷口碧1、米田道夫2、西川哲也3、中村政裕2、森冈泰叁2、冨山毅1*&苍产蝉辫;
1 広島大学大学院统合生命科学研究科; 2 国立研究开発法人水产研究?教育机构水産技術研究所; 3兵庫県立農林水産技術総合センター水産技術センター
*Corresponding author(責任著者)
掲載雑誌:Marine Environmental Research 215: 107827
DOI: 10.1016/j.marenvres.2025.107827
背景
イカナゴはイカナゴ科に属する小型鱼で、瀬戸内海の东部、特に大阪府、兵库県、香川県において重要な水产资源であり、3~4月にかけて渔获される稚鱼は「くぎ煮」の材料として広く亲しまれてきました。瀬戸内海东部におけるイカナゴの渔获量は、减少倾向にありながらも、2016年までは年间1万トン以上を维持してきました。しかし、2017年にイカナゴの渔获量は前年の约1割まで急激に落ち込み、その后も回復せず、现在まで3千トン未満の低水準が続いています(図1)。これまで、この减少の背景として、「海がきれいになりすぎたこと(栄养塩浓度の低下)により、イカナゴの饵となる动物プランクトンが减少し、その结果、イカナゴの产卵量が低下した可能性」が指摘されてきました。しかし、饵环境の悪化や产卵量の减少は、通常は时间をかけて徐々に进行する现象であるため、イカナゴの渔获量が2017年に突発的に大きく减少した理由は明确にはなっていませんでした。
研究成果の内容
本研究では、(1) イカナゴを捕食する魚類の増減に着目した長期データ解析、(2) 水温上昇と餌不足がイカナゴの行動に及ぼす影響を調べる飼育実験、を行いました。
(1) イカナゴは冬に生まれ、春~初夏にかけて活発に餌を食べて栄養を蓄えた後、夏に砂に潜って冬まで眠る「夏眠」という習性を持っています。このため、夏眠に入る前までに十分な栄養を蓄えられるかどうかが、生き残りにとって重要です。そこで、1~7月における魚食性魚類14種(サワラ、ブリ、ハモ、スズキ、ヒラメなど)の漁獲情報を解析し、捕食者の分布状況の変化を調べました。その結果、2015年以前と2016年以降で状況は大きく異なり、2016年から捕食者が急激に増加していたことが明らかになりました(図2)。
(2) 餌が十分な条件と餌が不足した条件でそれぞれイカナゴを飼育し、行動の違いを比較しました。その結果、餌が不足したイカナゴでは夏眠の開始が遅れることがわかりました。この影響は、水温の上昇による影響よりも大きく、餌不足の状態では、夏眠までに栄養を蓄えるためにイカナゴは長時間活動し続ける必要があることが示されました。これは、捕食者と遭遇する機会、すなわち「捕食される危険性」が高まることを意味します。
以上から、瀬戸内海东部のイカナゴには、饵不足と水温上昇、さらに捕食者の増加が重なって作用していたことが明らかとなりました。特に、2016年に捕食者が急激に増えたことにより、その年に夏眠に入るイカナゴが大きく减少し、その结果、冬の产卵量が激减したと考えられます。このことが、2017年に稚鱼が急激に减少した主な要因として説明されました。
今后の展开
イカナゴの资源量や渔获量は全国的に减少しています。その要因は海域ごとに异なる可能性もあるため、それぞれに调べる必要があります。これまでの资源変动の研究では、水温や饵环境など、生き物の成长や繁殖に直接関与する要因(ボトムアップ効果)が主に注目されてきました。一方で、本研究では捕食者の増减が资源変动に関与する可能性(トップダウン効果)が示され、このアプローチによる新たな科学的な検証が可能となりました。トップダウン効果は野外で直接検証することが难しいものの、长期的な渔获データ解析と饲育実験を组み合わせた统合的なアプローチによって、科学的な検証が可能となることを示した点に、本研究の意义があります。今后は、本研究の枠组みを他海域や他の鱼种に适用し、急激な环境変化のもとで起こる资源変动の仕组みを解明していくことが重要です。
参考资料
図2 魚食性魚類の分布密度(赤色が高く、青色が低いことを示す)
<研究に関すること>
広島大学大学院统合生命科学研究科 教授 冨山 毅
罢别濒:082-424-7941
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国立研究开発法人水产研究?教育机构
水产技术研究所 主任研究员 米田道夫
罢别濒:0193-63-8121
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<报道に関すること>
広島大学 広報室
罢贰尝:082-424-4518&苍产蝉辫;
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国立研究开発法人水产研究?教育机构 経営企画部広報課
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