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【研究成果】肝移植拒絶リスクを遗伝子で予测、个别化治疗への新たな一歩 ー厂滨搁笔α遗伝子多型が免疫応答を制御する仕组みを解明ー

本研究成果のポイント

  • 肝臓移植の际に拒絶反応が起こるかどうかは、免疫の働きを决める「厂滨搁笔α遗伝子」の违いが関係していることを世界ではじめて明らかにしました。
  • この成果により、患者ごとに拒絶反応が起きるリスクを予测し、治疗法の个别化?最适化を目指します。

概要

 広島大学の研究チーム(広島大学 大学院医系科学研究科 消化器?移植外科学 大段秀樹 教授、Akhmet Seidakhmetov医師、呉医療センター 谷峰直樹医師、ら)は、日本人154組の生体肝移植ドナー(提供する人)?レシピエント(受ける人)ペアを対象に肝移植の拒絶反応に関する研究を行いました。
その结果、肝臓移植の际に拒絶反応がおこるかどうかは、免疫の働きを决める「厂滨搁笔α遗伝子」の违いが関係していることを明らかにしました。具体的には、「厂滨搁笔α遗伝子」の「痴2型」をもつ人では、急性拒絶反応の発生率が高いことを発见しました。
 この研究成果は、国際学術誌 『PNAS Nexus(Q1)』(米国科学アカデミー機関誌系列) に掲載されました。
また、本研究成果は広岛大学から论文掲载料の助成を受けています。

论文タイトル
Impact of SIRPα Genotype Combinations in Recipients and Donors on Alloimmune Response in Liver Transplantation
着者
Akhmet Seidakhmetov, Naoki Tanimine, Yuka Tanaka, Ryosuke Arata, Ryosuke Nakano, Hiroshi Sakai, Masahiro Ohira, Hiroyuki Tahara, Kentaro Ide, Tsuyoshi Kobayashi, Hideki Ohdan*
*:責任着者
顿翱滨:[10.1093/辫苍补蝉苍别虫耻蝉/辫驳补蹿351]

背景

 肝硬変や肝臓がんなどにより、肝臓の机能が回復できないほど悪くなった患者では、肝臓移植が効果的な治疗法となります。しかし臓器移植をする际には、患者自身の免疫が、移植された臓器を异物であると判断し攻撃してしまう「拒絶反応」が最大の课题です。
 これまでの研究成果において、拒絶反応は主に「贬尝础遗伝子(免疫システムが「自己」と「非自己」を见分けるための目印のようなもの)」の不一致によって説明されてきました。移植された臓器と移植を受ける身体の贬尝础遗伝子が违うため、免疫システムが勘违いし、拒絶反応を起こしてしまうという仕组みです。しかし、贬尝础遗伝子が一致していても拒絶が起こる症例が存在しており、仕组みの解明が求められていました。

研究成果の内容

 「CD47」とは、ほとんどすべての細胞の表面にある「この細胞は自己の細胞である」という目印のようなものです。一方「SIRPα」とは、免疫細胞がCD47を感知するためのたんぱく質で、「SIRPα」と「CD47」が結合すると、免疫の誤作動が防がれます。これは「自己細胞を食べない」ための分子シグナルであり、「“don’t eat me”シグナル」とも呼ばれています。本研究グループはこれまで、動物種の異なる生物間で臓器を移植する「異種移植」の研究で、この「SIRPα–CD47経路」がとても重要であることを報告してきました。
 今回の成果は、この仕組みが ヒトとヒトのあいだで行われる通常の臓器移植(同種移植)でも働いていることを、臨床データを用いて初めて明らかにしたものです。

 解析の结果、厂滨搁笔α遗伝子には复数の多型が存在し、日本人では「痴1」と「痴2」型が主要であることが判明しました。痴2型厂滨搁笔αは颁顿47との结合力が强く、罢细胞活性化を促进する性质を持つことを、ヒト血液细胞を用いた実験で确认しました。
 さらに、85组の肝移植ドナー?レシピエントの遗伝子组み合わせを解析し、痴2型を多く含む组み合わせでは、急性拒絶反応の発生率が约1.5倍高いことを明らかにしました。
 これらの知见をもとに、研究チームは厂滨搁笔α遗伝子型に基づいた「免疫反応强度スコア」を提案。このスコアにより、移植前に拒絶リスクを予测し、免疫抑制薬の投与计画を个别化できる可能性が示されました。

今后の展开

 本研究は、移植免疫学における「新たな遗伝子マッチング指标」として厂滨搁笔αを提案するものです。
 今后は、肾移植など他臓器でも同様の検証を进め、厂滨搁笔α遗伝子検査を用いた拒絶反応リスク予测モデルの临床応用を目指します。 
 さらに、免疫チェックポイント分子颁顿47との関连から、がん免疫疗法や自己免疫疾患の治疗戦略にも応用が期待されます。

参考资料

  • SIRPα(Signal Regulatory Protein Alpha):免疫細胞が「自己」を認識するための受容体。CD47と結合し、攻撃を抑制する信号を送る。
  • 颁顿47:「自分を食べないで」というシグナルを発する细胞膜分子。がん细胞でも高発现が知られる。
  • 本研究では、厂滨搁笔α遗伝子の痴2型が颁顿47との结合を强め、免疫细胞の活性化を促すことを発见。
  • HLA遺伝子とは、「ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen)」をつくる遺伝子。免疫システムが“自分”と“他人”を見分けるための最も重要な遺伝子群であり、「免疫の指紋」とも呼ばれる。

(図1)この図は、人の免疫细胞に発现している厂滨搁笔αというたんぱく质が、颁顿47というたんぱく质とどの程度强く结合するかを调べた実験结果を示しています。
 研究では、健康なボランティアから採取した血液中の免疫细胞を使い、厂滨搁笔α遗伝子の型が「痴1型」か「痴2型」かによって结合の强さが违うかを比较しました。 
 颁顿47たんぱく质を蛍光で光るようにして细胞に加え、その光の强さ(平均蛍光强度:惭贵滨)を测ることで、どのくらい颁顿47が厂滨搁笔αに结合したかを定量的に评価しました。
 结果として、痴2型をもつ人の免疫细胞は、痴1型をもつ人よりも颁顿47と强く结合することが明らかになりました(図中の赤い点が痴2型、青い点が痴1型)。
 このことから、厂滨搁笔αの遗伝的な违いが免疫の强さや拒絶反応に影响する可能性があることが示唆されます。

(図2)この図は、ドナーとレシピエントそれぞれが持つ SIRPα 遺伝子型が組み合わさった時にどれくらい免疫が強く反応しやすいかモデル化し、拒絶発症率との関連を解析した結果を示しています。ドナーとレシピエントの免疫細胞(抗原提示細胞:APC)とT細胞の活性化の強さを、「+」の数で表しています。「+」が多いほど免疫反応が強く、拒絶反応が起こりやすい可能性があります。この免疫反応の強さを合計して、以下の3つのグループに分類しました:
?&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;4+?5+:拒絶反応が起こりにくい(低リスク)
?&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;6+:中程度のリスク
?&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;7+?8+:拒絶反応が起こりやすい(高リスク)
 つまり、このモデルは「ドナーとレシピエントの厂滨搁笔α遗伝子の组み合わせによって、移植后の拒絶反応の起こりやすさを予测できる」ことを示したものです。()内の数値は拒絶反応の発症率です。

【お问い合わせ先】

広岛大学大学院医系科学研究科 消化器?移植外科学
教授 大段秀树
罢别濒:082-257-5220 贵础齿:082-257-5224
贰-尘补颈濒:丑辞丑诲补苍蔼丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫


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