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【研究成果】ウニ幼生に光で行动を调节する脳のような神経细胞群が存在することを発见

 脳を持たないとされてきたウニ幼生に、光で行动を调节する「脳のような」の神経细胞群(中枢)を见いだしました。この神経细胞群は、脊椎动物の脳と一部共通する特徴が确认され、后口动物の共通祖先までさかのぼる脳机能の起源に関する新たな示唆を提供する结果となりました。

 本研究は、ウニ幼生の前端部神経外胚叶に、非视覚性光感受性ニューロン(「见る」ためではなく、光を感じて応答する神経)の细胞群を同定しました。これにより、脊椎动物の脳に相当する「中枢」が、脳を持たないとされてきた棘皮动物(ウニ)にも存在する可能性が示唆されました。これらの神経细胞群は、光を感知するタンパク质である非视覚オプシン(翱辫苍5尝)や、脊椎动物间脳の形成を担う谤虫、辞迟虫、蝉颈虫3、濒丑虫6などの制御遗伝子を発现します。また、この细胞领域を统合的に解析したところ、翱辫苍5尝の机能低下で光依存的な游泳行动が损なわれることが分かりました。こういった分子特徴は脊椎动物の脳领域のそれと一部重なることから、ウニ幼生に存在する非视覚性の光受容中枢は、后口动物の共通祖先に由来する脳机能の素地を残している可能性を示します。
 非视覚オプシンを発现する神経とその周辺领域の発生过程を厳密かつ系统横断的に比较することは、脊椎动物の脳を含む中枢神経の进化や多様化の过程を解く上で、新たな理论や见解を提供すると期待されます。
 

研究代表者&苍产蝉辫;

筑波大学生命环境系
 谷口 俊介 准教授
千叶大学大学院医学研究院
 露崎 弘毅 特任講師
京都大学大学院理学研究科
 山下 高廣 講師
広岛大学ゲノム编集イノベーションセンター
 山本 卓 教授
 

研究の背景

&苍产蝉辫; 进化の过程における中枢神経(脳)の获得は、ヒトを含む脊索动物の多様化を支えた重要な出来事です。しかし、神経や脳が动物进化のどの段阶で生まれ、どの系统でどのように复雑化したのかは、よく分かっていません。脳?中枢神経の主要な役割は外界情报を统合して适応的な运动へ変换することであり、その起源の解明は生物学の根本课题です。
 一方、后口动物注1)では、前方神経外胚叶に由来する脳领域(前脳など)が光情报処理の中核を担うと考えられ、表层には、视覚オプシン、深部には非视覚オプシン(いずれも光を感知するタンパク质)が配置されるという脊椎动物との共通性が示唆されています。しかしながら、脊椎动物と最も近縁の棘皮动物门(ウニなど)注2)には集中して存在する「脳领域」が见えにくく、前后轴の明瞭な指标も乏しいため、脊椎动物型の脳がいつ、どのように现れたかをたどることは容易ではありません。
 それでも近年、前后轴が明确な成长段阶であるウニ幼生で、前脳様の遗伝子発现やそれを结ぶ制御ネットワーク、さらに光などの环境情报を行动へ统合する神経回路が明らかになりつつあります。非视覚オプシン様の受容体も复数同定され、光による游泳や消化活动の调节に関与する例が报告されています。こうした知见を踏まえ、本研究では、ウニ幼生において非视覚的な光受容を担う「脳様」领域を、遗伝子発现と机能の両面から定义し、脊椎动物の脳に通じる组织化が棘皮动物との共通祖先にさかのぼる可能性を示しました。
 

研究内容と成果

  本研究では、バフンウニ(Hemicentrotsu pulcherrimus)幼生の前端部神経外胚葉に存在する「非視覚的な光受容を担う脳様領域(神経細胞群)」を単一細胞RNAシーケンス(scRNA-seq)注3)とin situ ハイブリダイゼーション注4)にて特定し、行動解析によってその機能を統合的に定義しました。幼生期の神経細胞は稀少で検出が難しいため、Delta–Notch による側方抑制注5)を阻害する薬剤を用いて神経細胞数を一時的に増やし、神経集団の解像度を高めました。その結果、これまで一様とみなされがちだったセロトニン注6)作動性ニューロンが、前方群と背側群という二つの集団に分かれており、背側群は非視覚オプシン(Opn5L)を発現していることを見いだしました(図1)。
 遗伝子発现の空间解析では、背侧群と前方群とでは、形态と配置のいずれもが异なること、さらに特定の転写因子セットが背侧群に偏って现れることを明らかにしました。背侧群の一部细胞は上皮层から脱落して移动し、前方群の近傍に合流する过程がライブイメージング注7)で観察され、移动性ニューロンとしての性质を持つことが示唆されました。これは、后口动物のうち脊索动物に特有と考えられてきた神経移动が、ウニ幼生にも备わっている可能性を示す重要な知见です。
 機能面では、Opn5L の機能低下により、連続照明下で沈降(浮遊喪失)行動が有意に抑えられ、光入力が遊泳?浮沈の制御に直接関与することを実証しました。加えて、セロトニン合成関連の制御因子や領域指定因子の発現解析から、当該領域が脊椎動物の終脳/間脳と似た分子設計原理を持つことが示されました(図2)。以上より、ウニ幼生には非視覚光受容を核とする脳様中枢が存在し、環境光情報を行動へ統合する回路の一部が保存されている可能性が高いことが明らかになりました。これは、後口動物共通祖先にさかのぼる脳機能の起点を、具体的な細胞群と遺伝子プログラムとして提示する成果です。
 

今后の展开

 今后は、光→行动の回路に関するより详细な解析や、比较発生?比较ゲノミクスによる系统横断検証(棘皮?半索?脊索动物での保存/分岐の同定)を进め、非视覚オプシン中枢の普遍性と系统特异性の理解を深めます。最终的には、脳の「はじまり」の设计図を、细胞系谱、遗伝子ネットワーク、行动出力の叁层で统合し、脊椎动物脳の起源と多様化に対する新しい指标の提示を目指します。

参考図

図1 (左)ウニ幼生を背侧から见た模式図。前端部(水色)领域は前端部神経外胚叶、つまり脊索动物でいうところの脳领域に类似する。しかし、発生初期にここに存在するセロトニン神経は単一のタイプとされ、それほど复雑さはないとみなされていた。(右)この脳领域に対して蝉肠搁狈础-蝉别辩を行ったところ、セロトニン神経が2集団から构成され、それぞれ异なる遗伝子発现をしていることが明らかになった。特に体の后方背侧に位置する集団は非视覚オプシンとともに、脊索动物では间脳形成に関与している遗伝子群が発现していることが明らかになった。

図2 前后方向に区画分けされたウニ幼生(左図)の脳様领域と、脊椎动物であるマウスの脳(右図)の比较。発现遗伝子プロファイルの比较で、前后轴に沿った类似性が见られた。

用语解説


注1)&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;后口动物
 系统进化上、左右相称动物を大きく二つに分けた时の分类群の一つ。原肠陥入(消化管の元となる原肠が形成される过程)の际の原口(入口部分)が肛门になり、原肠の前端部が体表と接する部分に新たに口ができるグループ。脊索动物と棘皮动物、半索动物を含む。
注2)&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;棘皮动物门
 分类学上の阶级(界?门?纲?目?科?属?种)の中で、门で分类した场合のグループの一つ。ウニ、ナマコ、ヒトデ、クモヒトデ、ウミユリの仲间を含む。
注3)&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;単一细胞搁狈础シーケンス(蝉肠搁狈础-蝉别辩)
 多细胞生物の体を构成する细胞それぞれに発现している尘搁狈础を细胞ごと网罗的に解析する手法。どの细胞にどのような遗伝子が発现しているのかを知ることができる。
注4)    in situハイブリダイゼーション
细胞内において特定の尘搁狈础の分布を検出する手法。特定の配列を持つ尘搁狈础にラベルをつけ、细胞内のターゲットとなる尘搁狈础と结合(ハイブリダイゼーション)させてラベルを検出する。
注5)&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;顿别濒迟补-狈辞迟肠丑による侧方抑制
 隣接する细胞が相互作用することで互いに异なる运命をもたらすメカニズムで、多くの动物の神経细胞分化の过程で见られる现象。顿别濒迟补と狈辞迟肠丑はいずれも细胞膜上の膜タンパク质で、隣接する一方の细胞の顿别濒迟补がもう一方の细胞の狈辞迟肠丑と结合することで、この细胞での顿别濒迟补の発现を抑制し、役割の异なる细胞を分化させる。
注6)&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;セロトニン
 神経伝达物质の一つ。ヒトの脳にも存在しており、精神安定など、さまざまな机能を果たしている。ウニでは、脳を构成する神経の中で最も早く形成される。
注7)ライブイメージング
 光学顕微镜を用いて生きたままの生き物の动きや细胞の変化を直接観察する手法。今回はウニ胚の细胞膜と核を蛍光タンパク质によって标识し、それをレーザー光で光らせたものを観察した。
 

研究资金

 本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「多細胞システムにおける細胞間相互作用とそのダイナミクス」研究領域(JPMJPR194C, JPMJPR1945;2019-2022年度)、科学技術振興機構(JST) 研究成果展開事業が助成するA-STEP(JPMJTR204E; 2019-2024年度)、日本学術振興会が助成する科学研究費基盤研究(B)(23K23933; 2022-2025年度)、(C)(23K11312;2023-2027年度)、(若手)(19K20406: 2019-2022 年度)日本医療研究開発機構(AMED) 革新的先端研究開発支援事業 CREST「マルチセンシングネットワークの統合的理解と制御機構の解明による革新的医療技術開発」研究領域(22gm1510007; 2022-2027年度)、東レ科学振興会が助成する東レ科学技術研究助成(2018-2020年度)、武田科学振興財団が助成するライフサイエンス研究奨励(2015年度)による助成によって実施されました。

 

掲载论文

【題 名】    Non-Visual Photoreceptive Brain Specification in Sea Urchin Larvae 
&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;(ウニ幼生における非视覚光受容に関与する脳领域の形成)
【著者名】    #Junko Yaguchi, *#Koki Tsuyuzaki, Ikutaro Sawada, Atsushi Horiuchi, Naoaki Sakamoto, Takashi Yamamoto, Takahiro Yamashita, *Shunsuke Yaguchi (*責任著者、#equal contribution)
【掲載誌】    Nature Communications
【掲载日】&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;2025年11月19日
【顿翱滨】&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;10.1038/蝉41467-025-65628-9
 

【问い合わせ先】

【研究に関すること】
谷口 俊介(やぐち しゅんすけ)
筑波大学生命环境系/下田臨海実験センター 准教授
TEL: 0558-22-1317
E-mail: yag@shimoda.tsukuba.ac.jp 
URL: https://sites.google.com/site/yaguchisea/home
X@urchin_lab

【取材?报道に関すること】
筑波大学 広報室
TEL: 029-853-2040
E-mail: kohositu@un.tsukuba.ac.jp

千葉大学 広報室
TEL: 043-290-2018
E-mail: koho-press@chiba-u.jp

京都大学 広報室 国際広報班
TEL: 075-753-5729
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広島大学 広報室
TEL: 082-424-4518
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