岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域(理)
神経行动研究室
教授 坂本 浩隆
准教授 越智 拓海
(电话番号)086-251-8656
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広島大学 大学院统合生命科学研究科
教授 島田 昌之
(电话番号)082-424-7899
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岡山大学大学院環境生命自然科学研究科博士前期課程の榎本千夏 大学院生(研究当時、理学部生物学科4年)、同学術研究院環境生命自然科学学域(理)の越智拓海 准教授、坂本浩隆 教授(神経内分泌学)は、広島大学大学院统合生命科学研究科の島田昌之 教授との共同研究により、「オキシトシン1)」の経鼻投与2)が雄ラットの性的モチベーションと精子機能を同時に改善する革新的な二重作用メカニズムを世界で初めて明らかにしました。これまでの男性性機能障害治療は、中枢性の性欲低下または末梢性の生殖機能のいずれか一方にのみ焦点を当てることが多く、包括的なアプローチが不足していました。本研究では、愛情ホルモンとして知られている「オキシトシン」を鼻から投与することで、脳の視床下部ニューロンを活性化し性的モチベーションを増強すると同時に、精巣上体機能や副性器活性を向上させ、精子運動率?前進運動率?精子数のすべてを有意に改善することを実証しました。特に注目すべきは、射精経験のない性的不活発な個体でも「オキシトシン」投与により自然な性行動が誘発された点で、従来治療では困難とされる重度の性欲低下と性機能障害の同時改善への新たな治療戦略の可能性を示しています。この研究成果は、2025年9月19日付で国際学術誌「The Journal of Sexual Medicine」電子版に掲載されました。
<现状>
男性性机能障害は、勃起不全(贰顿)、射精障害、性欲低下など多岐にわたる症状を呈し、男性の生活の质(蚕翱尝)に深刻な影响を与えています。现在利用可能な治疗法は、笔顿贰5阻害薬のような末梢性勃起メカニズムに主眼を置いたものや、ドーパミン作动薬のような中枢性?性欲に作用するものなど、単一の侧面にのみ焦点を当てることが多く、中枢と末梢の両方のメカニズムを同时に标的とする包括的アプローチは限られています。また、男性更年期障害(尝翱贬症候群)に伴う性欲减退や性机能低下に対しては、アンドロゲン补充疗法が効果的ですが、前立腺肥大症や前立腺癌などの重篤な副作用のリスクがあり、アンドロゲン非依存的な治疗戦略の开発が急务となっています。そこで本研究では、爱情ホルモンとして知られている「オキシトシン」の作用に着目しました。この脳ホルモンは母子の爱情形成だけでなく、男性の性机能に重要な役割を果たすことが分かってきています。今回、オキシトシン経鼻投与による中枢?末梢二重标的メカニズムを検証しました(図1)。
成熟雄ラットに「オキシトシン」を経鼻投与し、中枢神経系への作用を神経活性マーカーであるリン酸化贰搁碍(辫贰搁碍)に対する免疫组织化学染色法により解析しました。その结果、视床下部ニューロンにおいて顕着な神経活性化を确认しました。行动学的解析では、4週间の性行动トレーニング期间中に射精に至らなかった性的不活発な雄ラットに対してオキシトシン経鼻投与を行ったところ、マウント潜时と挿入潜时が有意に短缩し、射精潜时も短缩倾向を示しました。さらに、マウント、挿入、射精の各行动频度がコントロール群と比较して有意に増加しました(図2)。
末梢生殖机能への効果については、1週间の慢性オキシトシン経鼻投与を行った个体に対して、コンピュータ支援精子解析システム(颁础厂础)3)により精子机能を评価しました。その结果、精子运动率、前进运动率、精子数がすべて有意に向上しました。また、精巣上体、精嚢、前立腺の重量が有意に増加し、生殖机能の改善が示唆されました。一方、体重と精巣重量には変化がなく、オキシトシンが精巣上体上皮细胞机能と副性器活性を选択的に増强するはたらきがあることが明らかになりました(図3)。
図1 オキシトシン経鼻投与
上図は経鼻投与された薬物の移行経路を示しています。薬物は嗅上皮を通じて直接脳に到达する経路と、呼吸上皮から血管を介して全身循环に入る経路があります。
下部写真は雄ラットへのオキシトシン経鼻投与実験の様子です。ラットは头部を10°下向きに倾けた状态で麻酔マスクを装着し、薬液を鼻腔内に投与しています。この方法により血液脳関门を回避して効率的に薬物を脳に送达できます。
図2 オキシトシン経鼻投与によるオスの性行动への効果
3週间の性行动トレーニングを経ても射精経験のない性的不活発な雄ラットに対して、オキシトシンを経鼻投与することで自然な性行动が诱発されました。投与により行动开始までの时间が短缩され、行动频度も増加することが観察されました。これらの结果から、オキシトシン経鼻投与には「眠れるラットを起こす」ような强い行动促进効果があることが明らかとなりました。
図3 オキシトシン経鼻投与による精子机能への効果
颁础厂础解析(コンピュータ支援精子解析)により、精子运动率、前进运动率、精子数のすべてが有意に向上し、オキシトシン経鼻投与が生殖补助医疗へ応用できる可能性が示されました。
本研究で明らかにしたオキシトシンの中枢/末梢?二重作用メカニズムは、従来の単一标的治疗では解决困难な复合的な男性性机能障害に対する革新的治疗戦略を提供する可能性があります。特に、性的モチベーション低下と精子机能低下を併発する患者において、単一の治疗介入で両方の问题に対処できる画期的なアプローチとなり得ます。経鼻投与という非侵袭的な投与方法は、血液脳関门を通过して脳に直接作用し、同时に全身循环にも到达する可能性もあるため、中枢?末梢の二重効果を実现する理想的な薬物送达システムとなり得ます。今后の临床研究により、现在の治疗法では効果が限定的な患者に対する新たな治疗选択肢として确立される可能性があります。
さらに异分野横断的な観点では、同じ哺乳类のウシ?ブタなどの偶蹄类を主に扱う畜产业界において、従来の电気刺激などによる侵袭的な精液採取に代わる动物にやさしい繁殖管理技术として応用できる可能性もあります。また、イヌ?ネコなどの伴侣动物や、絶灭危惧种などの希少动物における动物にやさしい自然な繁殖行动の促进と精子机能改善により、より効果的な次世代型の繁殖プログラムの実现が期待されます。
論文名: Dual-action intranasal oxytocin enhances both male sexual performance and fertility in rats
「オキシトシン経鼻投与は雄ラットの性的モチベーションと精子机能を両方向上させる」
掲載誌: The Journal of Sexual Medicine
著 者: Chica Enomoto, Takumi Oti*, Takahiro Yamanaka, Masayuki Shimada, Hirotaka Sakamoto*(*責任著者)
D O I: https://doi.org/10.1093/jsxmed/qdaf228
発表论文はこちらからご确认いただけます。
https://doi.org/10.1093/jsxmed/qdaf228
本研究は、日本学術振興会(JSPS)の科学研究費助成事業(#22H02656; #22K19332; #23K14230)、岡山大学 次世代研究拠点形成支援事業(拠点代表者:坂本浩隆)、武田科学振興財団、内藤記念科学振興財団、両備てい園記念財団、ウエスコ学術振興財団、日本応用酵素協会、日本新薬株式会社からの支援を受けて実施されました。また、本論文は、「岡山大学 オープンアクセス推進に係る論文掲載料支援」を受けています。
(1)オキシトシン
「爱情ホルモン」とも呼ばれる脳ホルモンの1种で、母子间の绊形成、恋爱感情、信頼関係の构筑などに関わることが知られています。分娩时の子宫収缩や授乳时の乳汁分泌にも関与する一方、近年では男性の射精机能制御における重要な役割が明らかになり、泌尿器科领域では射精障害の新たな治疗标的としても注目されています。
(2)経鼻投与
鼻腔粘膜から薬物を投与する非侵袭的な方法で、血液脳関门を回避して中枢神経系に直接到达できる利点があります。全身循环への移行も可能で、中枢?末梢の二重効果を期待できる理想的な投与経路です。
(3)颁础厂础(コンピュータ支援精子解析)
精子の运动性、浓度、形态などを客観的かつ定量的に评価する标準的な検査法で、男性不妊症の诊断や生殖补助医疗において重要な役割を果たしています。
岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域(理)
神経行动研究室
教授 坂本 浩隆
准教授 越智 拓海
(电话番号)086-251-8656
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広島大学 大学院统合生命科学研究科
教授 島田 昌之
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掲載日 : 2025年10月17日
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