<研究に関すること>
広岛大学大学院医系科学研究科 未病?予防医学共同研究讲座
共同研究讲座教授 杉山 政则
罢别濒:082-257-5280 贵础齿:082-257-5284
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<広报に関すること>
広岛大学広报室
罢别濒:082-424-4383
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本研究成果のポイント
薬用植物と植物乳酸菌を组み合わせて発酵させることで、小麦アレルギーの症状を抑える新たな保健机能性が付与されることを発见しました。今后、机能性食品や医薬品への応用が期待されます。
概要
広島大学大学院医系科学研究科 未病?予防医学共同研究講座(杉山 政則 教授)では、薬用植物「白朮(ビャクジュツ)」の抽出液を植物由来の乳酸菌で発酵させることで、小麦アレルギーの原因物質「グリアジン」によるアレルギー症状を抑える新たな生物活性が付与されることを発見しました。マウス実験では、アナフィラキシー症状の軽減や炎症反応の正常化が確認され、今後は機能性食品や医薬品への応用が期待されています。今回の研究成果は国際学術雑誌『Nutrients』に、2025年3月26日に掲載されました(Q1, IF4.8)。
発表论文
?論文名:Atractylodes Japonica Rhizome extract fermented with a plant-derived Lacticaseibacillus paracasei (Lactobacillus paracasei) IJH-SONE68 improves the wheat gliadin-induced food allergic reaction in mice
?著者名:Ma Q1, Noda M1, Danshiitsoodol N1, Sugiyama M1,*
1:広島大学 大学院医系科学研究科 未病?予防医学共同研究講座
*:责任着者
?掲载雑誌名:狈耻迟谤颈别苍迟蝉
?DOI:10.3390/nu17071151 Q1 journal
背景
小麦は世界中で食されていますが、重度のアレルギー症状を引き起こすアレルゲンにもなっています。グルテン不耐症(过敏症)とは、グルテンの中に含まれるグリアジンという成分に过敏に反応して、身体にあらゆる症状を発生させるもので、近年では国内外で有病率が増加倾向にあります。
グリアジンは难水溶性タンパク质であるプロラミンの一种であり、特に、奥顿贰滨础(小麦を食べた后に运动することで引き起こされるアナフィラキシー)の原因物质として特定されています。奥顿贰滨础は小麦の口腔摂取のみでははっきりとした症状が现われないことから、认识されにくいので、小麦アレルギー有病率は过小评価されています。
このようなアレルギーに対する改善策の一つとして、「汉方薬」があります。例えば、薬用植物の一种マオウから分离した化合物の「エフェドリン」は咳止め薬として利用されています。このように薬用植物に含まれる有机化合物に関する研究は大学や製薬公司で进められてきました。
世界最古の文明が発祥したメソポタミアで、「植物を病気の治疗薬として用いた」との记録が残っています。本研究で用いた「薬用植物」には、ポリフェノール、食物繊维、配糖体などのさまざまな化合物が含まれています。汉方薬が未病改善、并びに病気の予防や治疗を目的として使われてきたことも、その事実を反映しています。
研究成果の内容
私たちの研究室で以下の现象を见出しました。例えば、乳製品の製造に用いられる动物由来の乳酸菌は薬用植物エキス中で増殖できませんが、植物乳酸菌は活発に増殖できることを発见しました。今回、薬用植物エキスを植物乳酸菌で発酵させることで、新たな保健机能性を调査しました。具体的には、植物乳酸菌ライブラリーとして保存している各种の乳酸菌株を各薬用植物エキスで培养し、小麦アレルギーを改善できるか否かスクリーニングしました。その结果、小麦のアレルゲンである「グリアジン」に対するアレルギーを示すマウスを用いた动物実験で、アレルギー症状を低减化させるのにふさわしい、生薬エキスと使用する植物乳酸菌株との组み合わせを见出しました。
本研究では、白朮(ビャクジュツ;根茎)の抽出液をイチジク葉由来の乳酸菌Lactobacillus paracasei IJH-SONE68で発酵させ、得られた発酵液を実験動物に摂取させました。白朮は中国原産の薬用植物で、漢方として使用することで胃腸の働きを助けたり、身体のだるさやむくみをとってくれる効果があります。
具体的には、「グリアジン」投与でアレルギー症状を惹起させたマウスに発酵液を経口投与すると、その症状が有意に抑制されました。すなわち、本発酵液は、グリアジンで诱発させた「全身性アナフィラキシー症状」を低减化させるともに、炎症性サイトカインの分泌バランスを正常化することがわかりました(参考资料)。
今后の展开
肠内细菌によって代谢されると、薬用植物に含まれる生物活性物质の量が変化したり、化合物が新たに生成したりします。従って、安全性の担保された植物乳酸菌株を用いた薬用植物エキス発酵液は、机能性食品や医薬品开発において利用ができるので、各种薬用植物と植物乳酸菌株との组み合わせ発酵を探索することを通じて、予防医学や创薬に寄与したいと考えています。今后は、医师主导型の临床研究及び製薬公司と连携して、医薬品としての上市を模索していく予定です。
参考资料

図1:未発酵および滨闯贬-厂翱狈贰68株発酵の白朮抽出液を小麦アレルギーモデルマウスに摂取させた场合におけるアナフィラキシー症状の変化



図2:未発酵および滨闯贬-厂翱狈贰68株発酵の白朮抽出液を小麦アレルギーモデルマウスに摂取させた场合における血液中の滨驳贰浓度(アレルギーで上昇)と、滨贵狈(インターフェロン)-γおよび滨尝(インターロイキン)-4浓度(ともに免疫応答のバランスを调节)の変化

図3:本研究成果の概略図