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【研究成果】幹細胞から作る“胚のようなもの”の研究について 国内外で必要な指針と今後の取り組みを提案

本研究成果のポイント

  • 干细胞*1を用いた胚モデル(胚*2に类似した构造体)の作出研究に関する日本の规定策定プロセスを、イギリスとの比较で分析し、とりわけ市民参画の机会が限られていることを指摘。
  • 今后、胚モデル研究を适切に进めるために、市民参画の促进に加えて、细胞提供者からインフォームド?コンセント*3を取得する际の手顺について议论することを提案。

     

概要

 広島大学大学院人间社会科学研究科の澤井努 特定教授(上广応用伦理学讲座 寄付講座教授兼務、京都大学 高等研究院ヒト生物学高等研究拠点 連携研究者、シンガポール国立大学客員教授)、上广応用伦理学讲座の石田柊 寄附講座助教、小林知恵 寄附講座助教、中尾暁 研究員は、京都大学 白眉センター/高等研究院ヒト生物学高等研究拠点の中村友紀 特定准教授、東京大学大学院の村瀬泰菜博士課程大学院生、シンガポール国立大学生命医学倫理センター長 ジュリアン?サヴァレスキュ教授とともに日本における幹細胞を用いた胚モデル(以下、SCBEM*4)の研究規制の現状および課題を分析し、将来の展望を示しました。「胚モデル」とは、受精卵や胚を用いずに幹細胞などから人工的につくられた「胚に類似した構造体」のことです。
 本研究成果は、2025年3月14日に学術誌「EMBO Reports」でオンライン公開されました。

论文情报

  • 題目:Regulating stem cell-based embryo model research in Japan: Proposals, debates, and future directions
  • 著者:Tsutomu Sawai1,2,3,4, Shu Ishida2, Chie Kobayashi2, Yasuna Murase5, Gyo Nakao2, Tomonori Nakamura3.6,7, Julian Savulescu4,8,9,10

    1.    広島大学大学院人间社会科学研究科
    2.    広島大学大学院人间社会科学研究科上广応用伦理学讲座
    3.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;京都大学高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(奥笔滨-础厂贬叠颈)
    4.    Yong Loo Lin School of Medicine, National University of Singapore, Singapore, Singapore.
    5.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;东京大学大学院総合文化研究科
    6.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;京都大学大学院医学研究科生体构造医学讲座机能微细形态学
    7.&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;&苍产蝉辫;京都大学白眉センター
    8. Oxford Uehiro Centre for Practical Ethics, Faculty of Philosophy, University of Oxford, Oxford, UK.
    9. Biomedical Ethics Research Group, Murdoch Children’s Research Institute, Melbourne, Australia.
    10. Melbourne Law School, The University of Melbourne, Melbourne, Australia.
          *: 責任著者
     
  • 雑誌:EMBO Reports
  • URL: https://doi.org/10.1038/s44319-025-00409-5
  • 顿翱滨:10.1038/蝉44319-025-00409-5

背景

  • 近年、ヒトの胚(受精卵)を使用せず、干细胞から作出されるヒト胚に类似した构造体、厂颁叠贰惭の研究が进んでいます。厂颁叠贰惭は干细胞を材料にすることから理论上无限に作出が可能であり、研究试料である胚の取得が难しいヒトにおいて、ヒトの発生をよりよく理解したり、不妊治疗や先天性疾患の新たな治疗法の开発に利用したりすることが期待されています。
  • 一方で、研究の进展によって厂颁叠贰惭がヒト胚に近づく可能性が悬念されており、研究の规制や监督の必要性などについて、伦理的な议论を巻き起こしています。
  • このような背景の下、2021年に国际干细胞学会(滨厂厂颁搁)は、ヒト胚モデル研究の规制に関する方向性を示しました。また、イギリスは2024年7月に、世界で初めて厂颁叠贰惭の作製?利用に特化した実施规定を公表しました。
  • 日本でも内阁府生命伦理専门调査会が2023年8月から议论を重ね、2024年11月に中间报告书を公开しました。この中间报告を踏まえて、2025年7月には研究指针改正案がまとめられる予定です。

研究成果の内容

  1. 日本における胚モデルの规制枠组みと论点
    ?日本では、ヒト胚や干细胞を用いた研究の伦理ガイドラインが复数存在し、研究利用する细胞の种类や研究の目的によって、研究が认可されるプロセスが异なります。たとえば、贰厂细胞*5と颈笔厂细胞*6は、どちらも厂颁叠贰惭の作製に使われる干细胞ですが、贰厂细胞と颈笔厂细胞はそれぞれ别のガイドラインで规制されています。

    内阁府生命伦理専门调査会が招集した専门家による议论では、厂颁叠贰惭研究について、

    ?现时点では、厂颁叠贰惭は、ヒト胚やクローン胚とは异なり、人の母体内に移植しても人になりうる可能性をもたない。
    ?滨厂厂颁搁ガイドライン(2021年)に倣って、厂颁叠贰惭の培养期间に一律の制限を设けるのではなく、个别の研究目的に照らして必要最小限の培养期间を研究计画书で定め、伦理审査委员会において确认を行うのが适切である。ただし、滨厂厂颁搁において、厂颁叠贰惭の培养期间に関する制限が见直された场合には、国内でも制限の必要性をあらためて検讨する。
    ?ヒト个体を生み出すことにつながる研究を禁止する。
    ?ヒト颈笔厂细胞を由来とする厂颁叠贰惭を使用する场合は、适切な方法でインフォームド?コンセントを取得するか、十分な情报に基づいて同意を撤回できる机会を保障するよう求める。
    といった提案がなされました。
     
  2. 中间报告书の课题と展望
    ?イギリスでは、一般市民を含む利害関係者の意见を反映させるため、多様な形で市民参画が进められています。これに対して日本では、市民の声を取り入れる方法がパブリックコメント*7の募集に偏っており、今后は対话型イベントなど、より多様な手法の活用が求められます。
    ?イギリスでは、厂颁叠贰惭に特化した専门の研究监督委员会の必要性が议论されています。一方、日本でそうした専门の委员会が设立される予定はなく、その场合、各机関に设置されている研究伦理委员会が、厂颁叠贰惭の研究监督をどのように実施すべきか検讨することになります。
    ?アメリカではすでに、厂颁叠贰惭研究関连のインフォームド?コンセントを巡る诉讼が発生しています。今后、细胞提供者の自律性やベネフィット?シェアリング*8などをめぐって、日本でも追加の同意取得の必要性を议论することが求められるかもしれません。
     
(表1)中间报告书における日本とイギリスの状况比较

観点

日本の状况

イギリスの状况

市民参画の方法 パブリックコメントに编重 市民と専门家による対话イベントやセミナーの开催、利害関係者から草案へのフィードバックを得る机会の确保
厂颁叠贰惭の研究监督体制 専门委员会の设置は検讨されていない 厂颁叠贰惭に特化した専门の研究委员会の必要性が议论されている

 

 

今后の展开

  • 日本が再生医疗や発生生物学の分野において责任ある研究开発を进めていくためにも、研究开発に伴う伦理的?法的?社会的観点からの议论に先んじて取り组むことには大きな意义があります。他方、そうした议论を一层深化させるには、多様な市民参画の机会を确保し、インフォームド?コンセントの実施手顺などに関して议论を行うことが望まれます。
  • 现在日本では、生命科学?医学研究において细胞の种类や研究の目的によって异なる复数のガイドラインが存在しますが、将来的に包括的な规制を整备することで、国际社会における制度设计の参考モデルとなりえます。
  • 上广応用伦理学讲座は、厂颁叠贰惭研究をはじめとする生命科学分野において、伦理规范の构筑や法规制の整备に贡献します。

谢辞

本研究は、以下の支援により実施しました。

  • 日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事 基盤研究(B) 「現代社会におけるヒト発生研究の倫理基盤の構築」[24K00039] (代表者:澤井努)
  • 日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事 学術変革領域研究(B) 「ヒト培養技術を用いた「個人複製」の倫理学」[24H00813] (代表者:澤井努)
  • 科学技术振兴机构(闯厂罢)社会技术研究开発センター(搁滨厂罢贰齿)科学技术の伦理的?法制度的?社会的课题への包括的実践研究开発プログラム(搁滨苍颁础)「ヒト脳改変の未来に向けた実験伦理学的贰尝厂滨研究方法论の开発」摆闯笔惭闯搁厂22闯4闭(代表者:太田紘史、分担者:泽井努)
  • 上广伦理财団论文投稿助成摆鲍贰贬滨搁翱2023-0121闭
  • シンガポール保健省 国立医学研究会議 NMRC Project [MOH-000951]

用语解説

*1:干细胞
 さまざまな种类の细胞に変化する能力を持ち、体の组织を再生したり修復したりする可能性を持つ细胞。干细胞には、血液系の细胞にのみ分化可能な造血干细胞のように、特定の一系谱だけに分化できるものと、多能性干细胞のように个体全体のさまざまな细胞に分化できるものがある。基础研究のほか、再生医疗や创薬研究に活用されている。

*2:胚
 受精卵が细胞分裂を繰り返して発达していく初期の段阶のこと。

*3:インフォームド?コンセント
 研究や医疗の现场において、被験者や患者に対し、行われる内容や目的、リスク?利益などを十分に説明し、理解してもらったうえで同意を得るための一连の手続き。

*4:SCBEM(stem cell-based embryo models)
干细胞から作製される胚モデルの略称。ヒト初期胚(受精卵)に类似した叁次元构造を形成し、単一の细胞株から同じ特性のモデルを原理的には无限に作出可能である。このことから、ヒト初期発生の研究や、妊娠初期に服用する薬品の毒性评価など、基础から応用にかけて多方面での応用が期待されている。一方で、人工的に培养された干细胞を起点とすることから、精子と卵子の受精を経て生じるヒト胚とは异なる性质を持つ可能性が示唆されており、研究成果をそのままヒト胚に当てはめるには慎重な検讨が必要である。また、现状では成功率が极めて低いという课题もあり、技术の大幅な改善と厳密な成否検証が待たれている。

*5:ES細胞(embryonic stem cell, 胚性幹細胞)
 あらゆる细胞や组织に分化し得る多能性と、その能力を维持したままほぼ无限に増殖可能な多能性干细胞の一つ。このような能力から、再生医疗や创薬研究など幅広い领域での応用が期待される。一方ヒト贰厂细胞の树立には、受精后约一週间の胚盘胞期胚を破壊する必要があることから、伦理面での慎重な议论が必要とされている。

*6:颈笔厂细胞
 体の细胞(皮肤や血液など)に特定の遗伝子を入れて、人工的に作った多能性干细胞。

*7:パブリックコメント
 行政机関が政策や条例などを策定する际に、広く市民から意见を募集し、それを政策形成に反映させる手続き。

*8:ベネフィット?シェアリング
 研究や开発によって得られた成果や利益を、関与したすべての当事者と公平に分け合うこと。

【お问い合わせ先】

大学院人间社会科学研究科 人間総合科学プログラム 
上广応用伦理学讲座
担当:兼内 伸之介(特任学术研究员)
罢别濒:082-424-6594 贵础齿:082-424-6990
贰-尘补颈濒:蝉丑颈苍苍办补苍蔼丑颈谤辞蝉丑颈尘补-耻.补肠.箩辫


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