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【研究成果】北海道?道北の陸域深部地下環境から水素を発生する新種の微生物を発見 (Gaoshiqia hydrogeniformans Z1-71T株の発見)

概要

幌延の地下深くで生まれるバイオメタン、その仕组みに迫る研究成果

 公益财団法人北海道科学技术総合振兴センター(ノーステック财団)幌延地圏环境研究所(以下、贬-搁滨厂贰)では、北海道北部の天北炭田の石炭层や珪质泥岩层等の地下环境に存在する未利用有机物を、微生物の作用によりバイオメタン*1に変换する技术の开発を进めています。このたび、国立研究开発法人日本原子力研究开発机构及び国立大学法人広岛大学との共同研究により、本技术开発に関连する研究论文を発表いたしましたのでお知らせいたします。

本研究成果のポイント

  • 北海道?道北地方に位置する幌延町の深部地下環境の地下水から、嫌気的条件*2のもとで生育する微生物の新種を発見しました(Gaoshiqia hydrogeniformans Z1-71T株の取得)。
  • 窜1-71罢株は、ブドウ糖などの糖类を分解し、水素を作り出すことが分かりました。
  • さらに、過去に同じ場所から取得したメタン菌*3(T10T株; Shimizu et al., 2013)をZ1-71T株と一緒に培養すると、Z1-71T株より水素や有機物がT10T株に供給され、最終的にT10T株がメタンを作ることが分かりました。
  • 微生物新種記載の上で最も権威ある「International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology*4」に、2025年6月4日付で発表となりました。

论文情报

研究論文名: Gaoshiqia hydrogeniformans sp. nov., a novel hydrogen-producing bacterium isolated from a deep diatomaceous shale formation
著者: 上野 晃生1、佐藤 聖1、玉村 修司1、村上 拓馬1、猪股 英紀1、玉澤 聡1、天野 由記2,3、宮川和也2,3、長沼 毅4、五十嵐 敏文1,5,6 (1ノーステック財団 幌延地圏環境研究所、2国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 幌延深地層研究センター、3国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル工学研究所、4広島大学大学院统合生命科学研究科、5北海道大学大学院工学研究院、6旭川高専)
公表雑誌 : International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (微生物新種記載の上で最も権威ある英国の科学雑誌)
オンライン公表日 :2025年6月4日(水) 
DOI : https://doi.org/10.1099/ijsem.0.006802

背景

 陸域地下環境には未だ人類が利用できない膨大な種類の微生物が存在していることが過去の研究から分かっていますが、陸域地下環境は酸素のない嫌気的な環境であり、この環境からの試料採取時には酸素への曝露を最小限にする方法が必要などの困難を要することが多く、研究を進める上での大きな障害となっていました。幌延町には、国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構が深地層研究施設を有しており、通常はアクセス困難な地下環境から研究用試料の採取が容易にできる世界的にも稀有なサイトとなっています。このような利点を活かし、H-RISEでは開所時より、幌延地下環境における嫌気的な環境に生息する微生物の研究を行ってきました。

研究手法

 研究グループは、国立研究开発法人日本原子力研究开発机构 幌延深地层研究センターが所有する地下250メートル調査坑道において、新規微生物探索のための地下水試料採取を行いました。実験室内での培養試験と微生物の単離試験を行い、取得した微生物については16S rRNA遺伝子*5および全ゲノム*6の塩基配列解析を活用し、データベース内に登録されている他の微生物と比較することで新種かどうかの判定を行いました。新種の微生物の可能性があるものについてさらなる解析を行いどのような特徴があるかを調べました。

研究成果

 陸域地下環境から、有機物を分解し水素を作る新種の細菌「Gaoshiqia hydrogeniformans Z1-71T株」の取得に成功しました。さらに、過去に同地域から取得したメタン菌*3(T10T株)と共培養することにより、Z1-71T株が作り出す水素やギ酸を使い、T10T株がメタンを作ることを明らかにしました。Z1-71T株とT10T株が共生的な関係を作りメタンを作るという結果が得られたことで、当地域の地下環境で、どのようにバイオメタンが生成されているかを明らかにする大きな手がかりになる研究成果です。

今后の展开

 今回発表した研究をさらに発展させることにより、当该施设を活用した陆域地下环境を新たな微生物资源探索の场として利用できることが期待できます。また、陆域地下环境でのメタン菌と、メタン菌の活动を助ける微生物との共生机构や、幌延地下环境でのメタン生成机构に関心が高まることを期待します。特に水素を発生する微生物が见つかったことから、水素からバイオメタンを生成する详细な机构の解明にも繋がり、エネルギー资源であるメタンガスを効率的に作り出す技术开発が期待できます。

用语解説

*1 バイオメタン
単にメタンとも言うが、特に微生物の作用によって作られるものを指す。化学式は「颁贬4」で示される。メタンは无色透明で无臭の気体。天然ガスの主成分で都市ガスに用いられている。メタンは天然から得られるほか、工业的にも大量生产されている。エネルギー资源として利用される。

*2嫌気的条件(=嫌気环境)
生物が関わる现象で、酸素の介在を伴わないこと、あるいは酸素が无い状态でのみ生じる条件。
逆に、酸素を使って生命现象を行う条件を「好気的条件」という。地下の环境は一般的に酸素の无い环境であるため、嫌気的な环境とみなされている。

*3 メタン菌
メタン菌は、メタンを生成する古细菌(アーキア)の一群で、酸素を嫌う嫌気环境に生息する。水素や有机物を分解してエネルギーを得る际に、メタンを副产物として放出する。

*4 International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (略称IJSEM)
英国の科学雑誌で、国际微生物学会连合(滨鲍惭厂)の公式誌。微生物分类の専门誌となる。新种の微生物の命名规约では滨闯厂贰惭への掲载のみを学名の正式発表としている。

*5 16S rRNA遺伝子
微生物の同定の际に用いられる遗伝子。この遗伝子の塩基配列を特殊な装置で読み、その结果を既存のデータベースと比较することにより、どのような微生物であるかを推定することが可能である。

*6全ゲノム
生物のすべての遗伝情报の集合。ゲノムとは、生物の细胞内に存在する遗伝子の総体を指す。全ゲノムを解析することで、その生物の进化的な特徴や机能、他の生物との関係を详しく知ることができる。特に微生物の分类や新种の记载には、全ゲノムの解析とその情报の比较が重要な役割を果たす。

参考资料

図1. 水素を生成するGaoshiqia hydrogeniformans Z1-71T株の電子顕微鏡写真

図2. 地下でメタンが生まれる仕組みの一例(共培養実験に基づく推定)

この図は、地下にいる2種類の微生物がどのように協力してメタンをつくるかを示しています。 新種の微生物のZ1-71T株は、ブドウ糖のような有機物を分解して、水素やギ酸(低分子量の有機物)を作り出します。すると、もう一方のT10T株というメタン菌が、それらをエネルギー源として使い、メタンガスをつくります。幌延の地下でも同じような仕組みで、地中にある有機物をエサにして、こうした微生物の“助け合い”によってメタンが生まれている可能性があります。

参考文献

Shimizu et al. (2013) Methanoculleus horonobensis sp. nov., a methanogenic archaeon isolated from a deep diatomaceous shale formation. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology. DOI : 10.1099/ijs.0.053520-0

【お问い合わせ先】

<研究に関すること>
ノーステック財団 : 公益財団法人北海道科学技術総合振興センター
幌延地圏環境研究所 (H-RISE)   玉村 修司 (研究主幹)
Tel: 01632-9-4112 (玉村)
Fax: 01632-9-4113 (幌延地圏環境研究所 (H-RISE))
E-mail:h-rise@h-rise.jp  (研究所)/ shuji.tamamura@h-rise.jp (玉村)

国立研究开発法人日本原子力研究开発机构 幌延深地层研究センター
堆积岩安全评価研究グループ 天野 由记
Tel: 029-287-0928
E-mail: amano.yuki@jaea.go.jp

国立大学法人広岛大学 
広島大学大学院统合生命科学研究科
名誉教授 长沼 毅(现在の所属:安田女子大学理工学部生物科学科)
E-mail: takn@hiroshima-u.ac.jp

<広报?报道に関すること>
国立研究开発法人日本原子力研究开発机构 幌延深地层研究センター
総务部报道课
Tel: 070-1460-5723
E-mail: tokyo-houdouka@jaea.go.jp

広岛大学広报室
Tel: 082-424-6762
Fax: 082-424-6040
E-mail: koho@office.hiroshima-u.ac.jp


 


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